<“学力向上”の現場>下 評価システム


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

◆点数、教員評価に/学力対策への圧力に

評価システムの圧力を感じつつ、教員らは子どもたちと向き合う(記事と写真は関係ありません)

 「点数が上がらなければ、給与に影響する」

 沖縄本島内の小学校。全国学力テストの対象になる6年生の担任らに前に、管理職は堂々とこう言い放った。2016年度から導入され、管理職による教員の評価が給与に反映される「教職員評価システム」を盾に、数値目標を掲げ学力を向上しようとする県の思惑がにじむ。「自分のクラスの平均点上昇が教育の中心になっている」。管理職からのこうした“圧力”に苦しみ、悩む現場の教員も出てきている。

 評価システムは、県教育庁が「教職員の資質向上と学校組織の活性化」を目的に導入した。学校が立てた目標に対応した、自己目標を各教員が設定し、その達成度を「SS」から「C」までの5段階で申告する。申告した自己評価を、管理職との面談で確認して、最終的な評価が決まる。

 評価は昇給に反映される。小中学校の本採用1年目の教員の場合、標準的な評価とされる「A」と最高評価の「SS」では、月額約7千円の差が出る。

 評価システムについては、肯定的な意見も聞こえてくる。本島内の中学校の中堅教諭は「教員は頑張っても頑張らなくても給与は同じだった。教員の努力を反映する仕組みは必要だと思う」と評価する。

 一方、現場教員が懸念するように学力テストの点数は、教員の評価にも影響を与えている。別の本島内の中学校中堅教諭は「同僚が、学力テストの点数の伸びを示し、高評価を得ていた」と明かす。

 「クラスの平均点を理由に評価が下がるのでは」との懸念は、現場教員に広まっている。本島内のベテラン中学校教諭は「県が掲げる『学力向上』のために各校、各教員が目標設定を強いられる。点数はその中で最も分かりやすい指標だ」と指摘する。このベテラン教諭は「目標達成のために、自分のクラスの平均点上昇が教育の中心になっている。自分の実践したい授業もできず、競争原理が教員をバラバラにしている」と現場の状況を証言する。

 県教育庁は学力テストの点数など数値目標の設定について「あくまで教員と管理職が話し合って決めることだが、年間を通して達成可能な目標であれば、有効な教育目標だ」との見解を示す。実態は「学力向上」にがんじがらめになる現場で、評価と給与に直結する学力テストの点数は暗い影を落としつつある。(塚崎昇平)