ボクシング・比嘉大吾、高地トレで闘う体 自信胸に初防衛戦へ


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標高1700メートル付近のグラウンドを使い、ダッシュを繰り返し体づくりを図る比嘉大吾(左)=長野県茅野市(和田清通信員撮影)

 世界ボクシング評議会(WBC)フライ級王者の比嘉大吾(22)=白井・具志堅スポーツ、宮古工高出、浦添市出身=が10月22日に東京・両国国技館で行う初防衛戦へ向け、高地トレーニングを行い「闘う体づくり」へ体力強化を続けている。防衛戦の日程が決まってから初めての合宿が9月2~9日にかけて長野県で行われ、走り込みを重点的に実施した。「厳しい練習にこそ意味があり、だからこそ自信を持って闘える。自分のボクシングができれば負けることはない」。山々に囲まれた静かな高原に比嘉の荒い呼吸が反響した。(和田清首都圏通信員)

 長野合宿はスキー場でも有名な茅野市の車山高原で行われた。標高1700メートル~1900メートル地点でのトレーニング。毎日、早朝5時50分から始まり、ランニングを行った後、早歩きで山頂付近まで上る。一度宿泊先に戻り、すぐに近くのグラウンドでダッシュを繰り返す。さらに午後は3時すぎから再びグラウンドに向かい、同じジムの県出身選手、長濱陸(那覇高出)や大湾硫斗(美来工科高出)と共にダッシュを重ね、体を「いじめ抜く」。

 顔をしかめ苦しそうに走る比嘉の表情からトレーニングの厳しさが伝わる。比嘉は「きついし、どれだけ合宿を行ってきても慣れることはない」としつつも、「高地トレーニングは気候的には涼しく、厳しい練習でも追い込むことができる」と話す。今回の合宿では足腰と心肺機能の強化を図り、闘える体をつくることが目的だ。

 初防衛戦の相手はトマ・マソン(27)=フランス=で、戦歴は21戦17勝(5KO)3敗1分け。身長が170センチほどあり、比嘉よりも10センチ上回る。「距離をどう詰めるかが大事。中に入れば怖くないが、距離が中途半端になり、一発大きなパンチをもらわないように気をつけたい」と警戒する。

 前回の世界戦では減量に苦しんだ面もあった。今回は早めの取り組みを目指し、東京に戻り次第、計画的に減量する方針だ。今後はスパーリングやウエートトレーニングを中心とした練習内容になるという。

 比嘉は現在デビュー以来、13戦13KO勝利中で、タイトル防衛とともに連続KOも注目されている。

 マソンとは身長差はあるものの「まず、自分のリズムをつかみたい。攻めて最後は倒したい」とKO勝ちに意欲を見せる。「99%勝つ自信はある。残りの1%はこれからの調整で埋めていく」。王者を守る重圧も苦しいトレーニングが自信へと変える。

「単なる王者に終わらない」 野木トレーナー太鼓判

野木丈司トレーナー

 比嘉大吾の長野合宿には、白井・具志堅スポーツジムの野木丈司トレーナーが帯同し、練習メニューを仕立てた。比嘉のこれまでの成長を見てきただけに「比嘉は単なる世界チャンピオンに終わらない。これからが期待できる選手だ」とし、「今回勝てば、その先の15試合連続KOや2階級制覇、統一戦などさまざまな目標が見えてくる。そのための一歩だ」と初防衛戦に並々ならぬ意気込みを見せた。

 長野合宿には対戦相手のトマ・マソンの3試合の様子を収めたDVDを持参し、対策を練った。ヨーロッパスタイルのきれいなボクシングが印象といい、「際立つ特徴はなく、比嘉は前回の世界戦のような力を発揮すれば勝てる。身長差があるので、パンチが届く位置にどうやって入っていくのかがポイントになる」と分析する。

 比嘉のこれまでの闘いぶりについて、「一定のリズムや強さでパンチを打つことが多かった」と見ており、マソン戦は「コンビネーションパンチの数をもっと増やしたい。流れるようにパンチを繰り出せるようにすることが理想だ」と闘い方について語った。

 元世界王者の内藤大輔ら数々の選手を指導してきた野木トレーナー。「比嘉はパンチ力の選手だと思われているが、日本人が不得意とされるアッパーカットもしっかり打てる。打てないパンチがないほどの種類を持ち、器用な選手だ。ディフェンス力も高い」と評価。初防衛戦の勝利とさらなる成長に期待を示した。