【沖縄】ハードロックのリズムを刻むドラムとギター、ベースに伸びのある高音が重なった。松川光吉(まつかわみつよし)さん(80)=沖縄市=の吹くアルトサックスの響きだ。高校時代に始めた楽器の演奏が何よりの楽しみ。10月には81歳になる松川さんは「自分では気にしたことはないけど、年齢を言うと驚かれる」という若さあふれる音を響かせている。
米軍基地内のクラブなどの専属ジャズバンドで活躍した元バンドマン。1972年の日本復帰と同時にバンドをやめ、サラリーマンに転身。それ以降は「食っていくことだけを考えた」と楽器を触ることは一切なかった。
再開は16年前。車の運転中に質屋のショーウインドーのサックスが目に入った。その瞬間「楽器を吹く楽しさがよみがえってきた」。すぐにその楽器を購入した。
約30年間のブランクがあったが、勘を取り戻すのに時間はかからなかった。現在は、沖縄市内のジャズビッグバンドで活動。ユーチューブの動画などを参考にプロのアドリブフレーズをコピーするなど、練習を欠かさない。「昔やっていた時よりも音を追究できている」と話す。
「新しい分野にも挑戦してみたい」と貪欲で、今月からドラマーの宮永英一さんが経営する沖縄市内のライブハウスのステージに時折、飛び入り参加し、ロックに乗せて吹いている。宮永さんも「一緒に演奏していて、年齢は全く感じない。基地内バンドで厳しく鍛えられ、基礎がしっかりしているから、すぐにしみ出てくるんだろう」と、安定のサウンドに太鼓判を押す。
「演奏は時間を忘れて没頭できる、至福のひととき」という松川さん。「夢は単独ライブの開催」と言い、若々しいサウンドで目標を追い続ける。(新垣和也)