米軍、パラシュート降下訓練を強行 「合意違反が常態化」 県と三連協中止要請後の実施  


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 久緒
MC130特殊作戦機から次々と降下する兵士=21日午前7時33分、嘉手納町屋良(新里圭蔵撮影)

 【中部】米軍は21日午前7時30分ごろから米軍嘉手納基地でパラシュート降下訓練を強行した。午前8時ごろまで2回行い、計16人がパラシュートで嘉手納基地に降下した。

 1回目は8人が午前7時29分、2回目は同じく8人が午前7時41分に高度約3000メートル上空からパラシュートでの降下を始めた。訓練を行った米兵が乗ったMC130特殊作戦機は午前8時4分ごろ、嘉手納基地に降り立った。その後、駐機場に戻る様子が確認されたため、今回の降下訓練は2回で終了とみられる。

 沖縄市、嘉手納町、北谷町でつくる「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)や県は訓練中止を求めていた。

MC130特殊作戦機からパラシュートで次々と降下する兵士=21日午前7時29分、嘉手納町屋良(新里圭蔵撮影)

 嘉手納町役場から訓練を目視した當山宏嘉手納町長は「日米の約束をほごにするような訓練は決して容認できない」と米軍の姿勢を非難した。県と合同で政府に抗議したことを踏まえ「政府は米軍に強く申し入れてほしい。恒常的に訓練を続ける懸念がある」とし、三連協として抗議する姿勢を示した。

 同基地での降下訓練は今年になり3回目で、SACO(日米特別行動委員会)合意後9回目。度重なる訓練の強行に地元は「合意違反が常態化している」などと反発が広がっている。

 三連協と県は同基地で降下訓練をしないよう7月に政府に対し、異例の合同での抗議要請行動を展開した。政府は日米の「2プラス2」(外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会)でパラシュート降下訓練の禁止を取り上げた。

MC130特殊作戦機からパラシュートで次々と降下する兵士=21日午前7時30分、嘉手納町屋良(新里圭蔵撮影)

 米軍は今回嘉手納基地で訓練をする理由について、要員調整不足で「伊江島施設が使用できず、訓練できる状態ではない。兵員の技能資格維持のために訓練せざるを得ない」などと周辺市町村に連絡していた。

 米軍は4、5月にも2011年以来となる降下訓練を強行し、6月にも計画していた。

 降下訓練をめぐっては、読谷村で1965年にパラシュートで投下されたトレーラーに小学5年の女児が押しつぶされて死亡した事件があった。日米両政府は96年のSACO(日米特別行動委員会)最終報告で、読谷補助飛行場から伊江島補助飛行場に移転すると合意した。その後2007年に「嘉手納基地を例外的な場合に限って使用」すると追加で合意した。

 一方、政府は今回、例外に当てはまるとの認識は示していない。【琉球新報電子版】