歴史教科書での「集団自決」(強制集団死)の日本軍による強制の記述を削除した教科書検定意見の撤回と、記述の回復を求めた2007年9月29日の県民大会の開催から10年となった。当時の大会主催者らでつくる「9・29県民大会決議を実現させる会」は29日、浦添市の結の街で報告集会を開いた。市民ら約100人が参加し、大会当時の経過や沖縄戦での「集団自決」の実態について理解を深めた。
集会で実現させる会の仲西春雅世話人が、読谷村で起きたチビチリガマ損壊事件に触れ「事件を起こした子どもたちの問題でなく、(沖縄戦の実態を)教えきれなかった大人の責任だ」と指摘した。
慶良間諸島での「集団自決」を体験したキリスト教短期大学の金城重明名誉教授は、日本軍から手りゅう弾が配布されたことを証言した。自らの手で家族を殺めたことを明かし「私も死ぬはずだったが生き残ってしまった」と振り返った。
元白梅学徒の中山きくさんは「戦争が軽視されている風潮がある」と危惧した。「戦争を知らない若者たちは教科書から学ぶ」と話し、教科書に沖縄戦の実相を記述する重要性を訴えた。
教科書検定の仕組みなどに詳しい高嶋伸欣琉球大学名誉教授は、10年前の県民大会が高校生用の日本史教科書で紹介されていることを触れ、「県民大会の記述は教科書検定でも通っている。11万人の集会を実現した県民は歴史を刻んだ」と強調した。
集会に参加した那覇市の佐々木健治さん(63)は「オール沖縄の取り組みとして県民大会が実現できたのは、市民社会やマスコミが成熟した沖縄だったからできたとわかった」と話した。