「米軍なき安保」探る 自衛隊を活かす会に140人


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現行憲法をいかした安全保障政策の可能性について考えるシンポジウム「沖縄から模索する日本の新しい安全保障」=30日、那覇市の青年会館

 平和憲法の精神を生かした自衛隊の活用や安保政策を考えようと「沖縄から模索する日本の新しい安全保障」(自衛隊を活かす21世紀の憲法と防衛を考える会主催)が30日、那覇市の青年会館で開かれた。約140人が来場した。柳沢協二元内閣官房副長官補、伊勢崎賢治東京外語大教授、渡辺隆元陸上自衛隊東北方面総監、加藤朗桜美林大教授、伊波洋一参院議員の5人が登壇し、在日米軍の「抑止力」を前提としない安保政策の可能性などについて意見を交わした。

 柳沢氏は「脅威」や「危機」を考える視点について、「日本にとっては尖閣が中国に奪われるか否かの『主権の戦争』だが、米国にとってはアジア太平洋地域での米国主導の覇権が維持できるかどうかの『覇権の戦争』だ」とし「この二つは完全には重ならない」と分析。武力攻撃をとなえる声が出てきた時に「それは誰のための、何を守る戦争なのか。そこに『日本』という要素がどれくらい含まれているのかを考えるべきだ」と指摘した。

 伊勢崎氏は朝鮮半島の問題を解決するには国連軍の名を借りて米軍が南北国境沿いに駐留している現状を変える必要があると指摘し「米軍は土俵から出ていき、韓国と北朝鮮という当事者同士で向き合うべきだ。ドイツなどの中堅国が国連安保理にその動議を出すべきだ」と話した。

 渡辺氏は、米国と中国の軍事力が均衡する地点が、韓国から現在はグアムに移りつつあるとし「そのような状況下で、米軍が対中戦略を考える際、沖縄では近すぎるのでグアムまで下がるという声が出てくるのも極めて妥当だ」と述べた。

 加藤氏は「米中が和解したらこの地域には平和が訪れる。その時、米中二国覇権体制下で日本はどういう位置をとるのかを考える必要がある。日本人の覚悟の問題だ」と提起した。

 伊波氏は、米軍や自衛隊による“離島奪還訓練”が当然のように報道される現状について「離島を奪還するということは、米軍が沖縄を守れなかったことを意味する。そこを問題視する声がない」と危機感を示した。