経済

「はいたいコラム」 農泊のごちそうは地域の輪

 島んちゅの皆さん、はいたい~! 岡山県で農村観光をテーマにしたシンポジウムがありました。せっかくですから岡山の農泊を体験しようと、岡山空港から車で30分、吉備中央町の農家民宿みっちゃんにお邪魔しました。晴れの国の愛称を持つ岡山は果物王国でもあります。みっちゃんこと田中美津子さん(65)はまず20種類以上のブドウを栽培する長浜知さん(67)のハウスへ案内してくれました。

 長浜さんが「こりゃあすごいぞ」と目を輝かせながら袋を外して見せてくれたのは、シャインマスカットです。マスカットにしては黄色いのですが、なんとそれは完熟の証し!一粒いただくと、感動的に華やかな香りと甘い果汁が口の中にほとばしります。にもかかわらず、黄色くなったものは見た目や日持ちの具合から市場には出回りません。一方、完熟のおいしさは地元ではよく知られ、近くの直売所では青々としたシャインマスカットと全く同じ値段で売られていました。これぞ産地ならではの旅の醍醐味(だいごみ)です。

 モノより物語を売る時代、実際にその土地を旅した人(消費者)は、思い出という物語を抱き、その商品価値を上げてくれるでしょう。私は長浜さんがブドウの袋を外したときの目の輝きを忘れることができません。それはどんなブランドや認証よりも生産者の喜びに満ちた農産物であることを示していました。

 みっちゃんの民宿では、畑で四角豆の収穫体験をさせてもらい、自家製野菜の心尽くしのお料理に、町の商工観光課の職員さんまで招いての大宴会で、翌日は和牛生産者の牧場まで案内してくれました。

 みっちゃんは地産地消弁当の仕出しをする料理上手でもありますが、農家民泊での何よりのごちそうは、その人柄と地域のネットワークでした。観光農園ではない長浜さんのブドウ園も、紹介者のみっちゃんがいたからこそ案内してもらえたのです。

 世界中の人々が旅する時代、国でも農村ツーリズムに力を入れていますが、農泊は単なる宿泊施設や食事にとどまらず、農村の暮らしへいざなう拠点、メディアだと捉えるべきでしょう。農村観光に必要なのは、特定の観光資源よりも、地域内が連携して紹介し合える関係づくりではないでしょうか。ご近所同士仲のよい地域は魅力がにじみ出るものです。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)



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