労働災害、平成以降で最多に 沖縄、高齢女性らの転倒目立つ 建設業も再び増加傾向


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 2016年の沖縄県内の労働災害(休業4日以上)による死傷者数は1091人に上り、平成に入って最多だったことが分かった。死亡者数は過去最低の5人だったが、高齢女性を中心とした転倒によるけがが増えているのが近年の特徴という。労災が増加する背景について沖縄労働局は「従業員の高年齢化など人手不足の影響が全般に及んでいる」と指摘する。

 今年に入ってからも、9月末までの累計は前年同期より40人(5・9%)多い723人と高い水準で発生している。近年は減少傾向にあった建設業が、前年同期比30人(30・3%)増の129人と増えているのが目立っている。同局健康安全課の城間豊和係長は「熱中症の増加に加え、足場からの転落など全般的に建設現場で事故が増えている」と注意喚起した。

 沖縄労働局の統計によると、労災死傷者数は沖縄が復帰した翌年の1973年に1277人と最多を記録し、このうち死亡者数は35人を占めた。復帰後しばらくは千人前後で推移していたが、85年に千人を下回ってからは減少傾向にあり、2009年に702人と過去最少を記録した。

 昭和年代に毎年500~400人程度の労災が発生していた建設現場での事故が、2000年代後半から100人台で推移するようになったのが全体の発生を押し下げてきた。

 この10年近くは全体の労災死傷者数が900人台と再び増加する傾向にあり、14、16年は千人を超えている。これまで突出していた建設と製造現場での発生が比較的落ち着いているのに対し、商業や接客娯楽業、福祉・介護施設などの発生が増え、転倒災害が全体の約3割を占めるという。

 近年の増加傾向について城間係長は「労基署に報告する意識が浸透したほか、転倒による骨折や腰痛といった事例が高齢女性を中心に増えている」と語る。

 ビルメンテナンス業の関係者は「60~70代の女性従業員がつまずいた際に手首を折る事例がある。ただ深刻な人手不足があり70歳を超えても戦力なので辞めてもらうと困る」と語った。