適正利益へ「転嫁カルテル」 公取委が申請受理 車体整備組合


この記事を書いた人 大森 茂夫
国の担当者や顧問税理士から消費税の適正な転嫁について学ぶ組合員=17日、浦添市のてだこホール多目的室

 沖縄県内の自動車板金塗装工場69社でつくる県自動車車体整備協同組合(西江康理事長)は、修理費を算定する際の基礎となる「技術料」に消費税分を上乗せすることを業者間で申し合わせる「転嫁カルテル」を公正取引委員会に届け出、受理された。物価変動や消費増税がありながら、事故車両の修理にかかる技術料は20年にわたって据え置きとなっていることから、業者が利益を確保できる適正価格への見直しを取引先に周知していく。

 消費税分転嫁の取り組みついて、同組合の城間弘健事務局長は「消費税率は10%にも引き上がっていく。深刻な人手不足に対応していくためにも適正価格で利益をきちんと出し、給料や福利厚生の充実などにつなげたい」と強調した。

 業界が結束して消費税の増税分を上乗せする方法を申し合わせる「転嫁カルテル」は、大企業や元請け企業との力関係などで、中小零細業者などが消費税を価格に上乗せできず負担を抱え込むことがないようにする対抗制度。事前の届け出により、独占禁止法の適用が除外される。

 板金塗装業界では修理費用について、人件費や地代、光熱費など工場の運営経費を加味した「技術料」を設定している。消費税率が5%から8%になった際も技術料は据え置きとなっており、同組合は「実質的には税抜き価格の引き下げで、組合員の経営にとって収益悪化の一因だ」と主張。事故車両の修理の際に損害保険会社などに提示する技術料について、消費税上乗せに取り組む転嫁カルテルを締結した。

 17日に浦添市内で転嫁カルテルに関する組合員説明会が開かれ、沖縄総合事務局公正取引室の金沢卓哉調査官は、消費税分の適正な価格転嫁を進める国の方針を説明。下請けに消費税を負担させる「買いたたき行為」など法律違反の事例を紹介した上で、転嫁カルテルについて「あくまで消費税分の上乗せの業界合意であり、技術料の額は個々の事業者の交渉になる。価格は自由なものであり、事業者が集まって取引単価を決めてしまうと独禁法違反になる」と指摘した。

 城間事務局長は「消費税転嫁の取り組みを組合から保険会社に呼び掛けていくことで各工場での価格交渉の後押しになる」と語った。