「琉球の古陶」魅せられ40年 医師の垣花さんが研究の成果を出版 17~18世紀の720点紹介


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本で紹介した17世紀後半の「四耳壺」。「表面にあるむらが魅力の一つだ」という

 沖縄県の豊見城市豊見城にある垣花整形外科の院長・垣花隆夫さん(74)は、焼き物に魅了されて約40年。長年にわたって収集・研究してきた沖縄県内の焼き物作品のうち、これまであまり紹介されてこなかった17~18世紀の作品約720点を紹介しようと、このほど「琉球の古陶 その美と流れ」を自費出版した。垣花さんは「琉球の人の持っていた感性や技術の素晴らしさは、もっと見直していかなければいけない」と話す。まだまだ知られていない焼き物の魅力を伝えたい考えだ。

 1616年、琉球王府が朝鮮人陶工を招き、琉球に陶器の製造技術をもたらした。垣花さんによると、その目的は一般庶民への陶器の提供で、陶工たちが自由に作品を作る時代が続いたという。垣花さんは「17~18世紀の作品はおおらかで、現代の焼き物にはないしっとりと落ち着いた味わいがある」と評価する。

垣花隆夫さん

 出版した「琉球の―」では、八重山諸島の新城島で赤土に砂などを混ぜて焼いたパナリ土器から、仏壇に供える瓶子(びんしー)や杯など、器種ごとに年代別に並べたのが特徴だ。

 収集を続ける中で、焼き物の時代と作られた場所があやふやな場合が多いことに気付いた垣花さん。器種ごとに並べ、博物館の作品や他の窯場から発掘された作品と比較し、文献で調べながら年代を推測した。「古陶の良さを伝えていくことが歴史の解明につながる」と感じている。

出版した「琉球の古陶 その美と流れ」

 10年前から本を出版する構想を持ち始めた。「一番良さが伝わる角度から見てほしいから」と、少しずつ全ての作品を自分で撮影した。「琉球の焼き物は、形も県外にはない物が多い。こんな素晴らしい物があるということを、私たちはもっと誇りにしていい」と力を込めた。

 「琉球の古陶 その美と流れ」は322ページ、6千円(税別)。県内書店やインターネットで販売している。

琉球の古陶 その美と流れ
垣花 隆夫
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