第34回さきがけ文学賞(主催・さきがけ文学賞渡辺喜恵子基金)の選考結果が3日発表され、最高賞の入選に沖縄県宜野湾市在住の作家で大学非常勤講師の大城貞俊さん(68)の小説「一九四五年・チムグリサ沖縄」が選ばれた。
受賞作は、沖縄戦の終結をやんばるや摩文仁、渡嘉敷などで迎えた少年や日本兵、老人などがそれぞれの視点から戦争の実相を語る短編六つで構成される。
同賞への応募総数は271編。選考委員は受賞作について「重いテーマを軽快な筆致で描き、リアリティーを浮き立たせた」などと評価した。
大城さんは昨年、出身地の大宜味村で戦争体験者の聞き書きを本にまとめ、作品をオムニバス形式で描いた。「沖縄戦の継承は、沖縄で表現活動をしていく者の課題。そういう作品が評価されてうれしい」と喜びを語った。
さきがけ文学賞は新人作家発掘と地域の文学振興を目指して創設。直木賞作家で秋田県出身の故・渡辺喜恵子さんと秋田魁新報社で設立した基金が運営している。県関係では1993年、河合民子さんが選奨に選ばれた。