「兵器トップセールス」の発言は トランプ大統領訪日に思う


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 米首都ワシントンDCはすっかり秋めいている。朝晩と日中の寒暖差が大きく、出掛ける時に何を着るか悩む。だが、それ以上に気になるのが、沖縄、日本、米国の間の温度差だ。

 トランプ大統領がアジア歴訪の最初の訪問国、日本での日程を終えた。安倍晋三首相とのゴルフや高級レストランでの会食など手厚い「接待」で、日米の蜜月ぶりをアピールした3日間。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に最大限の圧力を高めること、そして「辺野古が唯一の解決策」と確認した日米首脳会談の当日、沖縄防衛局は名護市辺野古の新基地建設予定地で、新たな護岸工事に着手した。

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)はトランプ氏の訪日を「日本のリーダー安倍首相 トランプ大統領の忠実な相棒を演じる」と報道。ニューヨーク・タイムズ(同)は「トランプ氏は、日本が米国の兵器を購入することで自衛が可能になると伝えた」との見出しで、日本が米国製の高額な兵器を購入することで、貿易と安全保障の関係を明確に打ち出せると述べたと報じた。

 「彼(安倍首相)は米国から多くの軍事装備を追加購入することで、空中で(北朝鮮のミサイルを)撃墜できる」「日本の総理大臣は大量の軍事装備を購入するだろうし、そうすべきだ」。安倍首相の隣でそう発言したトランプ氏の「兵器トップセールス」の言葉は、日本でどう受け止められたのだろうか。

 普天間飛行場に5年前に強行配備された垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは、低周波音を響かせながら県民の頭上を飛び、この1年間で2度墜落した。そのオスプレイを陸上自衛隊が導入し、佐賀空港へ配備する計画がある。

 米空軍は最新鋭ステルス戦闘機F35の12機を嘉手納基地に半年間、暫定配備。さらなる騒音被害が懸念される。米政府監査院(GAO)も深刻な部品不足や高額な費用面で運用に警鐘を鳴らす同機を、防衛省は2018年度予算の概算要求で881億円をかけ、6機を取得する計画だ。

 「沖縄の人々は沖縄戦の体験から『基地があるから狙われる。危険だ』と考えるが、米国では『同盟国を守っている』という考え方が多い。その違いをどう捉えるか」

 米国の外交軍事政策や基地問題を研究するアメリカン大のデイビッド・バイン准教授に問うと、こう答えた。「この認識の溝は、世界中にある米軍基地について、米国民がしっかり考えてこなかったことを反映している。例えば、沖縄の人々の立場に立って、基地が自分の地域にある人々のことを考えていないからだ」

 この指摘は、沖縄の基地問題に無関心な日本国民にも当てはまる。新たな米軍基地を造らせ、多額の米製兵器を購入し、この国は、どこへ向かうのだろうか。