病魔越え、復活の美声 那覇市出身歌手・奈月さん


この記事を書いた人 平良 正
関節リウマチを抱えながらも、ステージに戻ってきた歌手の奈月さん=3日、北中城村のあやかりの杜

 【北中城】関節リウマチを発症し、体が自由に動かなくなった沖縄県那覇市出身の歌手、奈月さんが厳しいリハビリを乗り越えてステージに戻ってきた。2000年の沖縄サミットのレセプションで歌を披露するなど、国内外で活動してきたが、09年に関節リウマチを発症し、薬の副作用で自慢の歌声も一時失った。歩けるようになるための手術を受け、3日、北中城村で8年ぶりにコンサートを開いた奈月さんは「病気の経験を無駄にしない。希望と勇気を与えられる歌手になりたい」と力強く語った。

 発症した関節リウマチは免疫が自分の体を攻撃して起こる自己免疫疾患の一つ。軟骨や骨が破壊されることで激しい痛みが伴い、関節が変形する。

 奈月さんは「体も痛くて、声まで奪われた。悲しくなるから音楽も聴けなかった」と苦しんだ日々を振り返った。そんな奈月さんを家族や友人らが支えた。「もう一度、ステージに立ちたい。人を励ます歌を歌いたい」。家族の支えを背に気持ちを切り替えた。

 しかし、手術を終えた奈月さんを待っていたのは苦しいリハビリ生活だった。発症後、寝たきりの状態が続き、電動車いすでの生活だった奈月さんの筋力は極度に衰えていた。

 足の曲げ伸ばしの訓練は1日6時間におよんだ。大量の痛み止めを飲みながらのリハビリに、全身の筋肉だけでなく、胃も悲鳴を上げた。

 それでも奈月さんは「歌で恩返ししたいという思いで頑張れた」と振り返る。友人が編集した奈月さんのライブ動画はステージに戻る原動力となった。2年ぶりに自分の足で歩いたときは自然と涙があふれた。

 北中城村のあやかりの杜で開かれた復活コンサートでは透き通った歌声を再び披露。集まった人たちは盛大な拍手でたたえた。

 最後に歌った「コン・テ・パルティロ」(君と旅立とう)は自分を支えてくれる人たちに贈った。

 「無理だと思っていたが、コンサートをやって良かった」。笑顔を見せる奈月さんは来年の秋ごろからの本格的な活動に向け、今も厳しいリハビリに励んでいる。(安富智希)