くしゃみをすると尿が漏れる、便秘がひどい、夜中に何度もトイレに行く…。排せつをめぐる悩みや困り事があっても、「年のせい」「恥ずかしい」と治療や対処をせず我慢している人は少なくない。アドベンチストメディカルセンター(西原町)は、排せつケアを専門にする看護師による「排せつケア外来」を21年前に開設し、治療とケアを組み合わせて患者の症状の改善に取り組む。4年前から地域に出向いて知識や予防の普及にも務めている同院の取り組みや排せつケアを2週に渡って紹介する。(新垣梨沙)
羞恥心、受診の壁に
コンチネンスとは、排せつをコントロールできる状態のこと。同院は1996年から、日本コンチネンス協会の西村かおる会長ら専門の看護師による排せつケア外来「コンチネンス外来」を全国に先駆けて開設し、患者の治療とケアに当たってきた。
西村さんによると、排尿障害は60、70代の女性に多く、妊娠・出産による骨盤底筋の緩み、肥満によって30代、40代でも尿漏れが起きることがある。男性の場合は前立腺肥大によって頻尿などが起こる。症状の裏にはさまざまな原因が隠れており、専門的な治療やケアが欠かせないが、看護師の富田なおりさん(38)は「排せつへの羞恥心やタブー視が邪魔をしてなかなか相談できず、受診するまでに時間がかかる人が多い」と語る。
同センターがまとめた2012年7月から14年9月までの受診者統計によると、発症した51人中84%に当たる43人が症状を自覚してから受診するまでに1年以上要していた。そのうち10年~27年と長期間悩んだ後に受診した人も9人いた。
緊張感解く口調
同院の外来は、患者1人に対して専任看護師が2人体制で対応する。排尿に関するトラブルの場合、看護師1人が目安となる200ミリリットルのコップを指し示し、1日の水分量や生活リズムのパターンなどを聞き取り、もう一人の看護師が患者の回答を丁寧にカルテに書き取っていく。
初めて外来を受診した47歳の女性患者は「一番つらいのは毎日夜中にトイレに行くために起きること」と数年に渡って寝不足が続いていることを訴えた。看護師は水分を摂取して尿となるまでに3、4時間かかること、就寝3時間前から水分を控えれば夜中の排尿量も変わってくることを説明。柔らかな口調に、最初は不安げだった女性患者も安心しきったような表情を見せた。
外来後、女性患者は「医師じゃなく看護師が対応したので始めは驚いたが、むしろ緊張感なく話せた。助言を早速試したい」とほっとしたように語った。
「排尿日誌」効果的
治療には、1日の排尿回数や尿量、切迫感や漏れの有無などを記す「排尿日誌」が役に立つ。自分自身の排尿パターンを正常な状態と比較したり、排尿のリズムや尿が漏れやすい時間を確認したりすることで、自己管理ができるだけでなく、医師や看護師の指導も受けやすい。
西村さんは「尿漏れを心配して早めにトイレに行くのは禁物。早め早めに排尿すると膀胱(ぼうこう)が小さくなってしまう。可能な限り、3~4時間間隔を空けて排尿してほしい」と助言する。尿漏れが骨盤底筋の緩みから来る場合は、筋肉を鍛える「骨盤底筋運動」も効果的といい「排せつに関する悩みは適切なケアで改善できる。1人で悩まず、まずは相談してほしい」と呼び掛けた。
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「コンチネンス外来」に関する問い合わせは予約専用電話(産婦人科兼用)(電話)098(946)2837。