政府の不作為問われる 米軍ヘリ窓落下


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窓を落下させたとみられるCH53E=13日午後0時25分、米軍普天間飛行場(花城太撮影)

 【解説】米海兵隊普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリが離陸直後に操縦席の窓を小学校に落下させた。7日に保育園で米軍ヘリの部品が落ちているのが見つかったばかり。復帰前から沖縄では空から予期しない物が落ちてくる恐怖との同居を余儀なくされてきた。普天間飛行場の危険性が改めて顕在化したもので、危険性除去への喫緊の取り組みがいよいよ避けられない。図らずも米海兵隊輸送機MV22オスプレイの名護市安部沖への墜落からちょうど1年の日に落下事故は起きた。沖縄では過去の記憶もあり、米空軍嘉手納基地や津堅島沖でのパラシュート降下訓練などへの拒否感は根強い。その中で落下事故も相次いでいる。

 米軍側は落下事故の一報を受けてCH53Eヘリのみの飛行を停止した。米軍は「安全性に確信がない時には飛行させない」とするが、一通りの点検をすれば安全が確認されたとしてすぐに飛行再開することを、これまでの経験から県民はよく知っている。県側の全機飛行停止の要請を受けた停止措置ではないことは留意する必要がある。

 普天間飛行場の危険性除去には仲井真弘多前知事が、辺野古埋立承認前の政府との交渉で5年以内の運用停止を求め、政府が実施を約束した。だが安倍晋三首相は今年2月、翁長雄志知事の辺野古新基地建設反対姿勢を念頭に「残念ながら翁長知事に協力していただけていない。難しい状況だ」と実現困難との認識を示している。その上で危険性除去には「辺野古移設が唯一の解決策」との主張を繰り返している。だが辺野古移設も10年かかるといわれる中で、県民が求めているのは、また落ちてこないかとの恐怖にさらされている現在の危険性そのものの緊急的な除去だ。「知事の協力」がないとして運用停止に取り組まない政府は不作為が問われよう。(滝本匠)