「はいたいコラム」 関係を買うのが旅


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 島んちゅの皆さん、はいたい~! 今年もあと2週間。皆さんはどんな一年でしたか? 2017年の流行語大賞は「インスタ映え」でした。そもそも人はなぜSNSに写真を投稿するのでしょう? 恐らく「いいね」が欲しいからでしょうね。見てくれた友達にいいねと褒めてもらいたい。自分が体験して、おいしい! かわいい! すてきと感じたことを、他の人にも伝えたいという感情は誰にでもあるものです。それを発信して、共感してうなずいてもらえるとうれしい。この感情は承認欲求と呼ばれます。

 心をハッピーにしたい時代、満たしたいのはおなかではなくハートです。食に限らず、あらゆる消費行動においても、欲しいのはモノではなく、感動や経験です。

 先日、一般財団法人地域活性化センターの主催で、都市農村共生社会創造シンポジウムが開かれ、「増やせ関係人口」と題して話し合われました。

 「関係人口」とは「地域に関わってくれる人口」のことで、移住・定住に限らず、何らかの形でその地域に関わり、応援してくれる人たちのことです。雑誌「ソトコト」の指出一正編集長は、若い人たちの田園回帰の傾向を「関係を買う時代」だと話しました。東北や被災地の復興支援にボランティアに行くことも、地域のものを積極的に選んで食べる応援消費も、ふるさと納税も、そしてインスタグラムも、対象との関係、関わりを求めていると言えます。SNSを改めて分解すると、ソーシャルなネットワークのシステムです。ユーザーは、ソーシャル、つまり社会的な関わりに自分の価値を見出そうとしているのです。いいねの時代とは、多様性の時代です。みんなで褒め合えば、友達も社会も丸く平和になります。

 文芸評論家の谷沢永一さんの著作「人間通」にこんな言葉を見つけました。

 「人間は最終的に何を欲しているのか。それは世に認められることである。人間は生涯をかけて(中略)私を認めてくれと叫びつづける可憐(かれん)な生き物なのだ」

 お金を払ってでも関係を手に入れたい。できれば自慢したい。その最たるものが旅ですね。旅先での思い出は、かけがえのない関係消費です。来年はどんな町や村の人と関係するのか。わくわくしてきませんか。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)