「はいたいコラム」 韓国で見た炭の番人


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 島んちゅの皆さん、はいたい~! 新しい年の始まり。友達のいる韓国ソウルへ行ってきました。1月のソウルは氷点下5度の日もありましたが、お天気はよく、アツアツのチゲ鍋や炭火焼きがおなかと心にしみました。食べ歩きした中で最も感動したのはチュクミ。イイダコの炭火焼きです。コチュジャンに漬け込んだイイダコを炭火で焼いて、吸盤がプリプリはじけそうになったところをはさみでカットします。韓国海苔やエゴマの葉を巻いて食べると、タコのうまみと辛さが絡まって興奮が止まりません~。

 翌日はフグの塩焼きです。これまた炭火焼きで、一口大にカットしたフグの白身を炭火であぶり、何とわさび醤油(じょうゆ)でいただきます。上品なフグの白身に喜んでいたら、アルミホイルに包まれて焼き上がったのはフグの白子です。かたまりの白子をスプーンですくって塩をひと振り。シンプルな味付けでクリーミーさが口の中でとろけます。前菜は、フグ皮とセリのあえ物です。食材も調味料も日本とほぼ同じなのに韓国にしかない組み合わせで新鮮でした。

 フグの店には、炭運び専門の人がいて、店の外で炭火の管理をして、頃合いを見て運んでくれるのです。高級店ではない食堂に炭の番までいる徹底ぶりに私は感動しました。日本にも炭火焼きの店はないわけではありませんが、大半はガスコンロに代わっているのが現状です。スイッチ一つで調整できて便利ですが、エネルギーには限りがあります。一方、飲食店に炭の需要があれば、炭焼きという仕事が継承され、山に定期的に人が入り、森林は保たれます。焼き物は炭火に限るよねと言って食べることが、環境保全や地域の応援になるのです。おいしい上にサステイナブル(持続可能)ではありませんか。

 韓国は急速な経済発展を遂げた一方、「薬食同源」の考えから食の本物志向が強く、フグの店はフグだけ、タコの店はタコだけと昔ながらの専門店が多いのも魅力です。そこには旅行客が来ようが来まいが、手間や人件費がかさもうが、自分たちのやってきたスタイルは変えないという確固たる意志がありました。これぞ国の文化です。魅力ある沖縄とは、来訪者におもねるよりも、沖縄らしさを、自分たちの衣食住を大切に営むこと。結果的にその姿が外の人を惹(ひ)き付けるのではないでしょうか。 (フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)