名護市長選「市民の選択の結果」 稲嶺さん、声絞り出す


この記事を書いた人 Avatar photo 大城 誠二
渡具知武豊さんの当確報道を受け、顔に手をやる稲嶺進さん=4日午後10時39分ごろ、名護市大中の選挙事務所

 「残念ながら、辺野古が争点とならなかった」。2期8年の実績と沖縄県名護市辺野古の新基地阻止を訴えた稲嶺進さんは、約3500票差で3選に届かなかった。午後10時28分、渡具知武豊さんの当選確実がテレビで流れると、市大中の選挙事務所は沈黙に包まれ、カメラのシャッター音だけが響いた。稲嶺さんは報道陣のインタビューに「市民の選択の結果だ。真摯(しんし)に受け止めないといけない」と言葉少なに話した。

 米軍キャンプ・シュワブ沖での護岸工事が進む中、今回の市長選は過去2回と比べものにならないほど厳しかった。新基地建設の是非に触れず、経済振興を前面に押し出す相手候補。選挙期間中、稲嶺さんは「基地で栄えても、裏には人の犠牲がある」「市民の良識を信じている」と強調し、建設阻止を懸命に訴えた。

 陣営には毎日、多くの人が訪れ、メッセージや手紙を寄せた。米軍属女性暴行殺人事件の被害者の父親からも、応援の差し入れが届けられた。「子どもたちに安心と安全を届ける」と勝利を信じて闘った。

 気温11度まで冷え込む中、稲嶺さんは翁長雄志知事や地元選出の国会議員、多くの支持者らと事務所の外で開票を見守った。落選が伝えられると、鼻を赤くし、涙を拭うしぐさを見せた。

 インタビューで「工事はまだ予定の1%にも満たない。止めることはできる。諦める必要はない」と強調すると、支持者は「そうだ」と声を上げ、拍手と指笛で応えた。