子と犬 心通わせ 沖縄県内の児童施設 「処分予定」引き取り訓練


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 沖縄県内の児童福祉施設の子どもたち6人が、殺処分予定だった犬2匹に家庭犬用トレーニングを施しながら、飼い主を探している。県が県公衆衛生協会に委託した事業で、子どもたちの情操教育を通じて殺処分数の減少につなげる取り組みだ。同協会によると、児童福祉施設の子どもたちが殺処分予定の犬を引き取り、家庭犬用のしつけを施して譲渡する試みは国内初。

児童福祉施設の児童6人が訓練している、殺処分予定だった2匹の犬=7日、与那原町のマリンプラザあがり浜

 子どもたちがしつけを始めたのは2017年10月。週に2回、訓練士の井上朝章さん(53)の指導を受けながら、犬をしつけている。犬は2匹とも1~2歳の雌で、2月までトレーニングを続け、譲渡先が見つかれば引き渡す予定。

 7日は与那原町のマリンプラザあがり浜で犬を指導した。人混みでも他人に迷惑を掛けないよう、歩いたり座って待たせる練習をした。「よく我慢できたね」「大丈夫、怖くないよ」など、犬に声を掛けたり、緊張している犬を抱き寄せて抱擁したりしながら、1時間半を過ごした。

 訓練士の井上さんは、初めて犬と子どもたちが対面した時、犬に声を掛けられず、特にほめることができず立ち尽くす様子を見て「しつけは無理かもしれないと思った」と振り返った。井上さんも不安なまま、子どもたちにリードを持たせ、訓練を始めた。

 「『犬怖い』って思った時に、犬が逃げていったのを覚えている」と話したのは5年生の女の子。「気持ちが伝わるのかなって思った。1回ほめたら少しずつ自分に慣れてくれた」

 周囲の子どもたちも次第に変化し始めた。4年生の男の子は、訓練当初の日誌には訓練内容を箇条書きで記していただけだったのが、次第に「とても怖がっていた」と犬の気持ちを記すようになった。

 児童福祉施設の女性職員(39)は「子どもたちの普段の様子が変わってきた。一番大きいのは、自分の気持ちを言葉で表現し始めたこと。笑顔が増え、犬の様子を気にするように、相手の気持ちを考えるようになった」と語った。

 犬の譲渡についての問い合わせは県公衆衛生協会(電話)098(945)2686。