「琉球処分」に新境地 東恩納寛惇賞、西里喜行氏に贈呈


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祝賀会に駆け付けた人たちから笑顔で花束を受け取る西里喜行さん(左)=23日夜、那覇市前島の沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハ

 第35回東恩納寛惇賞(琉球新報社主催、第一書房後援)の贈呈式が23日、那覇市のかりゆしアーバンリゾート・ナハで開かれた。「琉球処分」の研究に新境地を開いた琉球大学名誉教授の西里喜行氏(77)=宜野湾市=に、琉球新報社の富田詢一社長が賞状とトロフィー、賞金を手渡した。第一書房から副賞が贈られた。

 東恩納寛惇賞は、沖縄を対象とした研究の発展に顕著な業績を上げた研究者に贈られる。

 西里氏は中琉日関係史が専門。1870年代から80年代の琉球の所属問題について、日中間交渉を基調とする従来の「琉球処分」研究の在り方を検証し、琉球側の動向を注視し三者の関係を詳細に検討した。

 西里氏は研究仲間の支えに言及した上で「亡き妻のひろ子が半世紀の間、研究を支えてくれた。感謝の気持ちを表明したい」と喜びをかみしめた。

 1940年生まれ、竹富島出身。69年に京都大学大学院文学研究科博士課程(東洋史学)単位取得満期退学後、72年に琉球大学教育学部助教授、83年~2006年まで琉大教授を務めた。琉球王国評定所文書の編集事業をけん引した。89年以降は県歴代宝案編集委員会委員を務めている。

 富田社長は「沖縄の自己決定権の視点から琉球処分を再定義した研究は、多くの県民にとって励みになる」と功績をたたえた。