女子学徒の戦争体験、次代に 広島の大学生が沖縄戦白梅隊のDVD


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
(左から)元白梅学徒隊の中山きくさん、広島経済大の岡本貞雄教授、同大4年生の渡辺優気さん、逸見修太さん、野村和己さん=5日、沖縄県政記者クラブ

 広島経済大学(広島市)の岡本貞雄教授ゼミの学生らは5日、看護要員として沖縄戦に動員された元白梅学徒隊の中山きくさん(89)の戦争体験をまとめたDVD「元白梅学徒隊中山きく―沖縄戦戦跡を辿(たど)る」を沖縄県教育庁に寄贈した。寄贈は県内の全中学校、高校、特別支援学校宛ての250枚で、同庁を通して各校に配布される。

 DVDは160分の大作で、約30人の学生が携わり昨年12月に完成した。2015年2月に、中山さんが沖縄戦下でたどった沖縄県八重瀬町東風平の東風平国民学校跡地から、米軍に保護された南城市佐敷までのルートを3日間かけて歩いた。学生らが実際に歩きながら中山さんが体験を証言する映像を収録した。

 学生らは5日、県庁で記者会見し、DVDの制作過程などを説明した。同大4年の渡辺優気さん(22)は「膨大な量の資料をみんなでまとめた。(沖縄戦の体験談を)自分が聞いて終わらせるのではなく、見たものを誰かに伝えなくてはいけないとの思いで作業を進めた」と振り返った。

 岡本ゼミでは、2007年から各女子学徒隊が沖縄戦下でたどったルートを学生らがたどり、冊子やDVDで記録してきた。岡本教授は「これまでのDVDは授業で使えるものにしようと、20分程度の構成で制作したが、ちゃんとした作品にしようと(今回のDVDを)計画した」と説明した。

 中山さんは「女子学徒の(生存者の)仲間たちは、高齢化している。後世に残るDVDができたことは、戦争体験の見本となる」と、学生らに感謝していた。

 会見に先立ち開かれた贈呈式で、県教育庁の半嶺満県立学校教育課長は「戦争体験者の高齢化が進む中、(DVDは)貴重な資料だ。活用して児童・生徒が平和への思いを持ってもらう一助としたい」と述べた。