「遺骨保管は不正義」 京大に返還訴訟も 那覇でシンポ


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公開シンポジウムで意見を述べる日本オセアニア学会の研究者ら=21日、那覇市の県立博物館・美術館

 日本オセアニア学会(山本真鳥会長)の公開シンポジウムが21日、那覇市の沖縄県立博物館・美術館で開かれた。松島泰勝・龍谷大学教授が、昭和初期に旧帝国大学の人類学者らによって沖縄から多数の遺骨が持ち出され、返還されていない問題を報告した。

 松島氏は遺骨返還を求め、遺骨を保管している京都大学に対して集団訴訟を提起する考えを改めて示した。

 松島氏は「盗掘は刑法上の犯罪だが、窃盗物の保管も共犯だ」「琉球国の礎を築いた先祖の遺骨が琉球人のやり方で埋葬、供養されないという不正義がある」と京都大学を批判した。その上で「再埋葬されることによって遺骨はモノから人になり、生者との関係性が回復する。脱植民地化の政治的象徴となる」と強調し、遺骨の返還を求めた。

 ニュージーランドの先住民族マオリを研究している深山直子・首都大学東京准教授は「植民地主義の下で劣位に置かれた点で、沖縄とオセアニアは通じる。その文化を住民中心の視点でどう語り、生かすか。オセアニア研究が沖縄に貢献できる点は多い」と語った。

 吉岡政徳・放送大学兵庫学習センター客員教授は、オセアニアが現在も一般的に「辺境」と見られていることを問題視した。その上で「バヌアツの伝統文化復興運動のリーダーであるヒルダー・リニ氏ら、エリートに焦点を当てることで、伝統と近代の融合という視点で同時代的に捉えてもらえるだろう」と提言した。