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9歳の命を守れなかった学校の「いじめ防止対策」 豊見城・小4男児自殺(解説)


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 わずか9歳だった小4男児の自殺について、市教育委員会が設置した第三者委員会が、自殺といじめの因果関係を認める報告書をまとめた。いじめ防止対策推進法で定められている本人がつらいと感じれば「いじめ」に当たるという認識が学校側に欠如し、いじめを「トラブル」と捉えた学校側の認識の甘さが浮かび上がった。

 過去に起きた自殺などのいじめによる重大事態を分析した総務省の勧告では学校側の課題として(1)いじめの定義の限定解釈(2)校内の情報共有不足―などが示される。第三者委は「今回の事案はこの課題が全て当てはまる典型的な例だ」と指摘した。過去の事例の教訓が現場で生かされていなかった形だ。

 市教育委員会は「いじめの定義は学校に周知し、学校も方針を示してきた」とする。しかし、アンケートでいじめを訴えた男児の声は学校現場では拾い上げられず、心理検査で明らかになっていた「傷付きやすい」男児の性格を踏まえた対応もなされていなかった。学校側のいじめ防止対策が、完全に形骸化していたことを示している。

 市教委が今回の事案を重大事態と認定しなかったことも、調査や対応の遅れにつながった。報告書の完成に約2年半を要し、重要な事故前のアンケートを担任が確認した時期が不明なままであることや遺族に対する風評は、調査の遅れが一因であることは否めない。

 守れたはずの命を守れなかった。市教委や学校側の責任は重く、第三者委の指摘を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。さらに今回の提言は、市教委だけでなく子どもに関わる全ての大人に向けられたものだ。私たち一人一人に、亡くなった児童の死を無駄にしない努力が求められている。
(半嶺わかな)