【東京】在沖米海兵隊輸送機MV22オスプレイの訓練移転に関する昨年のアンケートで、全国の知事の中で唯一、受け入れに前向きな姿勢を示した米山隆一新潟県知事が7日までに琉球新報の取材に応じた。訓練受け入れには「沖縄に負担してもらっているリスクを他の県が取れないわけはない」と述べ、国民全体で議論すべきだとの認識を示した。多くの沖縄県民が米軍普天間飛行場の県外移設を求めていることに関しては「どこにすべきかは言えないが、本質的には沖縄にいなければならない理由はない」と強調した。
米軍横田基地への配備に向け米空軍のCV22オスプレイが日本に到着したことに関連し「今までは日米地位協定の話は皆なんとなく人ごとだった。結局、自分の問題だと今分かった。配備を自分の問題と捉えて安全にしてもらわないといけない。地位協定の改定に取り組むいいタイミングではないか」と語った。
沖縄の基地負担について「安全保障にとって基地が必要な部分というのはある。皆、危険はあるが、ないといけないと思っている。その危険も分かち合うのがあるべき姿だ。自分はリスクを負わないで安全保障を享受して、(沖縄の基地負担は)仕方ないと言う権利はない」と強調した。新潟を含め県外の移転候補地には言及しなかった。
アンケートは昨年末に共同通信が全国の知事を対象に実施した。新潟県だけが、国による情報開示と十分な説明などを条件に「どちらかというと賛成」と回答した。「県民理解が進むことを前提に自治体として受け入れるべきだ」と答えた。
米山隆一新潟県知事とのやりとりは次の通り。
-オスプレイの訓練移転で全国で唯一受け入れに前向きだった。その理由は。
「当然そうあるべきだ。きちんと説得して安全を確保してというのが前提だ」
-安保の負担が沖縄にしわ寄せされている現状をどう考えるか。
「本当に申し訳ない。安全保障に基地が必要で、危険だがないといけないと皆思っている。自分たちはリスク(危険)を負わないで安全保障の利益を享受しておいて、(沖縄に)『仕方ない』と言う権利はない」
-負担を分かち合うのに、オスプレイの訓練移転はできることの一つか。
「そうだ。沖縄の人にわれわれ(本土の人間)は安全保障のために『このコスト(危険性など)を取ってください』と言ってる。沖縄に取れるコストを他県が取れないわけはない。基地も本質的には同じ。だが基地を今から造るのは、お金という意味で非現実的で難しい。少なくともオスプレイの訓練は、落ちる危険以外の部分は極めてコストは低く現実的にできるだろう」
-沖縄では県外移設を求める声は大きい。だが新たに基地が造られようとしている。県外移設の民意をどう見るか。
「県外に出してという気持ちは非常によく分かる。どこにすべきかは言えない。だが先ほどの理屈と同じで、『このリスクを取れると言うなら、あなたたち(本土の人)だって取れるはずだ』と言うのは、そうだとしか答えようがない」
-もともと沖縄にいなかった海兵隊が米施政権下の沖縄に移された。必ずしも地政学が理由ではない。
「米施政下でやりやすかったからというのが一番大きかったと思う。そこが歴史的経緯だろう」
-県外で負担受け入れの広がりが見られない。
「そこは非常に難しい。絶対沖縄になければならないというのは本当は違うだろう。複雑な歴史的経緯であって、決して地政学だけで沖縄ということはない。技術の進歩や情勢の変化で変わり得るだろう。国民全体でも議論していくべきだ。議論を提起する側は、より共感を得られるPRをしていくべきではないか」
-日米地位協定も改定すべきと回答した。CV22オスプレイの横田基地配備で全国でも沖縄と同じ問題にさらされることになる。
「今まで地位協定の話は人ごとだった。自分の頭の上になったら本気になるかもしれない。やっと皆、自分の問題として考えられる状況ができた以上、全員で考えるべきだ」
-CV22の配備で新潟も含めた区域で訓練する。新潟県も当事者だ。CV22の配備はどう考えるか。
「当事者だ。配備についてはあまり物を言わない。国の専管事項で、本当に必要かまで分からない。(本土をオスプレイが飛ぶようになり)いま皆の問題だと分かった。安心も含めてやってくれと米国にちゃんと言うべきタイミングになったんだろう。当事者意識を持って地位協定改定に取り組むいいタイミングだ」
(聞き手 東京報道・滝本匠)