「薬学部創設を」 全国一薬剤師が少ない沖縄で署名活動


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県PTA連合会理事会で、薬学部創設の意義を訴える県薬剤師会の亀谷浩昌会長=3月(同会提供)

 薬剤師不足解消のため、沖縄県内に薬学部を―。県内の国公立大学への薬学部・学科の創設を求め、県薬剤師会が県医師会、県歯科医師会、県看護協会と連名で1月から署名活動を行っている。署名期間は当初、3月末を予定していたが、4月末まで延長した。沖縄には薬剤師養成の大学はなく、人口10万人当たりの薬剤師数が全国で最も少ない。同会は学部創設で人材確保だけでなく、さまざまな効果があると賛同を呼び掛ける。

 「かかりつけ薬剤師が地域で活躍すれば、病気を防いで医療費を抑えられる。超高齢社会を迎えると、役割はますます大きくなる」。県薬剤師会の亀谷浩昌会長が強調する。国は、高齢になっても住み慣れた地域で暮らし続けられるよう「地域包括ケアシステム」の構築を進める。薬剤師の役割は重視されるものの、県内では慢性的な人材不足に悩まされている。

 厚生労働省によると、2016年12月末時点で、人口10万人当たりの薬剤師数は全国平均が181人に対し、沖縄は134人と最も少ない。同会は薬剤師を対象に無料職業紹介を実施しているが、求職に訪れる人は慢性的に少ないという。責任者の大城喜仁さんによると、県出身者が県外大学を卒業し薬剤師になると、そのまま本土で就職するケースが多い。大城さんは「ここ10年は特に人材不足で、離島や本島北部地域はさらに深刻だ」と危機感を募らせる。

 国公立にこだわるのは、経済的な負担を考慮しているためだ。亀谷会長によると、私立大の学費は6年間で平均1200万円にもなる。一方で、国公立大はその3分の1以下といい「県外からも優秀な人材が入り、県内の研究水準向上にもつながる」と期待を寄せる。

 県も、人材不足の認識を持つ。県議会2月定例会で、県内に薬剤師を養成する大学がないことを問われ、県保健医療部の砂川靖部長は「薬学部設置は、薬剤師不足解消のための一助となる可能性がある」と答弁。県薬剤師会などの動向を注視し、課題の洗い出しをしていく考えを示した。

 同会は医療や教育関係者らを回り、4月4日時点で約4万筆が集まった。問い合わせは同会(電話)098(963)8930。