沖縄女子短期大学(鎌田佐多子学長)は10日、与那原町の同大学で、特別講演会を開き、茶道裏千家の前家元の千玄室(せんげんしつ)大宗匠(94)が自らの戦争経験を通じて平和の尊さを説いた。千玄室氏は戦時中に旧日本海軍の特別攻撃隊(特攻隊)の所属となったが、出撃直前に待機命令が出たまま終戦を迎えた。多くの戦友を失った悲惨な戦争経験を基に、戦後は「一碗(わん)からピースフルネスを」との言葉を掲げ、茶道を通して平和の大切さを伝える活動を60年余も続けている。
講演は「今一度 平和を考える」がテーマ。千玄室氏は舞台から降り、学生らに目線を近づけて優しく語り掛けた。参加した学生や教職員ら約250人は話に聞き入った。
千玄室氏は大学2年の時、学徒出陣で1943年10月に海軍に入隊し航空隊の操縦訓練を受けた。45年4月に特攻隊となるよう命令が下った。先に沖縄方面へ出撃する戦友らのために茶をたて、ようかんを出してもてなした。戦友からは「千なぁ、生きて帰ったらお前の所の茶室で茶を飲ませてくれ」と言われたことが忘れられないという。
出撃前の戦友の様子については「みんな『おふくろに会いたいな』などと涙を流し、絶叫していた。今もまだ耳の奥に聞こえる」と振り返った。
太平洋戦争について「沖縄でもどれだけの人が犠牲になったか。戦争は二度と起こしてはいけない」と強調した。これまで60カ国余りを計300回以上も訪れ、茶道の心を通し平和の大切さを伝える活動を続けていることも紹介した。
講演を聞いた同大2年の比嘉琴音さん(19)は「一碗が人と人をつなげる力を持つことを知った。茶道や今回の講演で学んだことを胸に刻み、身近な人にまずは伝えたい」と語り、講演に感謝した。