沖縄戦と基地 実相発信 4・3事件70年で作品展 韓国・済州


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 韓国南部の済州島で島民数万人が軍などに殺害された「済州4・3事件」から70年の節目を祈念する「ポスト・トラウマ展」が3月31日から済州道立美術館で始まっている。6月24日まで。国内外の美術家ら約10人が平和と人権をテーマにした作品を展示している。沖縄からは彫刻家の金城実さん(79)が「恨(はん)の碑」のレプリカ、「漁夫マカリーの像」など7作品を展示。映像作家・美術家の山城知佳子さんが制作した「土の人」3面版も上映されている。

 「4・3事件」は1948年から54年にかけて発生した。朝鮮半島の南北分断体制の固定化に反対する勢力の一部が蜂起したことが発端で、長らく「共産主義者の暴動」と見なされ、遺族も疎外されてきた。

 「ポスト・トラウマ展」は「4・3事件」の歴史的な意味の再解釈と、人権を守り平和な社会づくりが目的。金城さんの「恨の碑」は沖縄戦中、後ろ手に縛られて日本兵に銃床で殴られ処刑場へ連行されている朝鮮人軍夫の姿から、むごたらしい戦争の実相を強烈に表現している。山城さんの「土の人」は韓国・済州島と沖縄を舞台に、軍事基地を抱える地域の苦悩を寓話性(ぐうわ)を盛り込んで描いている。

 金城さんと山城さんは展示会の開幕式に参加した。金城さんはトラウマ展への参加を踏まえ、沖縄の慰霊の日について「平和祈念公園で『土の人』を上映するなど文化的な伝え方ができるよう工夫してほしい」と提案した。山城さんは「慰霊の心を伝える意志の強さ、表現力の豊かさを感じた。台湾、中国、ベトナムなどからアーティストが参加していた。自身の国で起きた歴史を振り返り、忘却させないと語り合う展示会だった」と実感を込めた。