「ほとんど価値ない」 米、辺野古アセスに疑問 10年報告書 国防総省専門家が指摘


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う沖縄県名護市辺野古への新基地建設を巡り、沖縄防衛局が2009年にまとめた環境影響評価(アセスメント)準備書について米国防総省の専門家が国の天然記念物で絶滅危惧種のジュゴンへの影響に関して「調査方法の適合性に疑問があり、ほとんど価値を持たない」と否定的な見解を報告文書で示していたことが18日、分かった。国防総省が委託した米国の専門家チームは10年、基地建設による影響の評価や緩和措置の作成・評価は困難か不可能と判断していた。

 防衛局のアセスを巡っては、県や環境団体が、調査や評価の不備を指摘してきた経緯がある。米国の専門家からも同様の見解が示されたことにより、環境影響評価の甘さが改めて問われそうだ。

 国防総省の報告文書は、米国家歴史保存法(NHPA)順守を目的に実施した「沖縄のジュゴンの人類学的調査」。文献調査のほか、民俗学者や生物学者、考古学者に聞き取り調査を実施し、報告書にまとめた。報告書は、日米の自然保護団体が米国防総省に工事の中止を求めた米ジュゴン訴訟の中で米連邦地裁に提出された。

 訴訟では、米海兵隊と米国識者のやりとりも開示された。その中で海洋哺乳類学者トーマス・ジェファーソン氏は電子メールで「アセスは非常に不十分で科学的検証に耐えられるものではない」「ジュゴンへの影響が予想される」と、防衛局のアセスを批判していた。
 国防総省の調査は「生物学的保全の条件が整えば、代替施設の建設は絶滅危惧に直面するジュゴンに対し悪影響を与えることなく進めることができる」と結論付けたものの、「観察者の経験、個々の調査手法の適合性に疑問がある」など厳しい評価を示し、海兵隊に自発的な調査を求めた。

 これらの文書を踏まえ、国防総省は14年4月に辺野古新基地建設が「ジュゴンに悪影響は与えない」とする「推奨報告書」を米連邦地裁に提出。同年7月に日本政府は工事に着手した。

 県は米国防総省の報告文書について「資料を入手し、対応を検討したい」とコメントした。

 沖縄防衛局は、環境影響評価書について「十分に時間をかけ、県からの意見や環境の専門家からの助言を踏まえて作成された。科学的専門的観点から十分に議論された妥当なものである」と答えた。