女性の入会拒否 久米崇聖会「前例ない」理由に


この記事を書いた人 大森 茂夫
久米崇聖会が管理・運営する久米至聖廟(孔子廟)=1日、那覇市

 沖縄県那覇市の松山公園内に設置された久米至聖廟(孔子廟)を管理する一般社団法人「久米崇聖会」は2017年6月から18年2月にかけて会員としての入会を申し込んだ女性4人の入会を認めないことを、3月の理事会で決定していたことが1日までに分かった。創立104年の伝統がある同会は、女性が会員になった前例がないことを理由に理事の過半数が入会に反対した。ただ理事の中から決定に異論も出たため、同会は今後会員全体から意見を聞いた上で定款の会員資格を現行よりも具体的に定め、女性の入会申し込みにどう対応するか検討する。

 久米崇聖会の定款で定められている会員資格は「久米三十六姓の末裔(まつえい)」とあるだけ。入会を申し込んだ女性4人は会員の姉妹や娘らで、久米三十六姓の家に生まれ、これまで同会の行事運営に会員らと一緒に参加してきた。女性たちは入会を申し込んだ理由に、会の活性化につなげたい思いなどを挙げているという。

 関係者によると、理事会では理事9人のうち1人が欠席し、女性会員の入会に5人が反対し3人が賛成した。賛成意見は男女の平等や共同参画の観点を踏まえ「今の時世では入れるべきだ」とし、反対意見は「今まで1人も女性会員がいない」などの理由を挙げた。

 同会によると、入会を申し込んだ女性4人のうち少なくとも2人は結婚して姓が変わった。過去には久米三十六姓の末裔の男性が婿養子になって姓が変わった後、入会を申し込んだが「久米三十六姓ではなくなった」と拒否した事例がある。

 同会は19日に開く総会の後、姓の変更があった場合を含む女性の会員申し込みにどう対応するのか、会員全体に意見を聞く予定だ。これを踏まえて改めて理事会を開き、定款にある会員資格の「久米三十六姓の末裔」をより具体的に定義したい考え。3月までに申し込みがあった女性4人の入会は、変更後の定款に基づいて再判断する方針だ。

◆定款の会員要件検討へ

 久米崇聖会によると、過去に女性が同会へ会員としての入会を申し込んだ事例がない状況に理事会で賛否両論の声が上がった。最終的に反対の声が過半数を占め、入会拒否に至った。ただ、男女共同参画が進む中、女性の入会申し込みにどう対応するか組織として基準を整理する方針だ。

 久米崇聖会は、中国から渡来してきた「久米三十六姓」の末裔(まつえい)が久米至聖廟(孔子廟)などの施設を組織的に管理・運営するために1914年に設立された。各施設での祭祀(さいし)も運営し、広く道徳の高揚を図ることや人材育成、地域貢献も目的に会員数は約230人。

 理事の中には「女性の入会を禁じる決まりは定款になく、女性が入ることに違和感はない。排除することはできない」と入会拒否を疑問視する声がある。男女とも入会することで組織の活性化につながるとして「古い体質では発展性がない。変えたい」と強調する。

 一方、同会の理事長や副理事長は「今は(会員資格は)『久米三十六姓の末裔』のくくりしかない。DNAが混ざっていれば、誰でもなれるとも捉えられる。あまりに間口(まぐち)が広すぎる。クニンダの子孫というくくりが大事だ」と強調した。定款の変更を検討し「男性にしろ、女性にしろ、会員をどこまで広げていいのか、定款や規定をきちっと決めみんなが納得する会員を入れたい」と語った。

◆合理的伝統か 理由の確認を

 久米崇聖会が女性の入会を認めなかったことについて、ジェンダー問題に詳しい矢野恵美琉球大学法科大学院教授は「伝統なら何でも良いわけではない。伝統にみんなが納得する合理的な理由があれば守った方が良い」と強調する。

 土俵の女人禁制が議論となった日本相撲協会は公的予算が投入される公益財団法人であるのに対し、久米崇聖会は会費などで運営する一般社団法人であることを挙げ「本人たちに決める権利がある」とも指摘する。

 同会の考えについて「(久米三十六姓の)末裔(まつえい)や姓にこだわるのは分からないわけではない」とし、「なぜ女性を会員に入れてこなかったのか理由を確認し、守ってしかるべき伝統か検討した方がいい」と強調した。