社会保障、基地 どうなる 若者不安 改憲論呼ぶ 大学生憲法アンケート


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 琉球新報社が沖縄大学、琉球大学、沖縄国際大学の県内3大学で実施した憲法意識調査で、改憲の必要性を感じている学生が6割を超えていることが浮き彫りになった。本紙が実施した2007年、14年の同様の調査では改憲派は3割以下にとどまっていた。専門家らは社会保障への不安感や基地問題など国との対立が続く沖縄の現状などから、生存権の拡充に期待したり、支配的な風潮に同調したりする学生が増えていると指摘した。

 アンケート調査では「改憲が必要」との理由に78・3%が「時代に合わなくなっている」「新たな権利や義務などを盛り込む必要がある」と回答した。憲法学が専門の高良鉄美琉大教授は背景に「将来への不安感がある」と分析する。少子高齢化社会や年金問題など社会保障問題が突き付けられている中、安倍首相は改憲案で教育無償化などを盛り込んだ。高良教授は「景気回復を実感できない若者にとって、教育無償化などは平等や生存権などの権利を拡充してほしいと感じている若者の意見と一致しているのではないか。それが今回の調査結果に反映されている」と推し量った。

 一方、近年、北朝鮮のミサイル開発や尖閣諸島周辺での中国軍艦航行など緊迫する東アジア情勢を伝える報道が相次いだ。調査でも憲法9条に自衛隊を明記する必要があると回答した学生のうち、「安全保障環境の変化」を理由に挙げる人が31・7%で最も多かった。

 沖大で憲法を教える法経学科の岩垣真人講師は「学生からは他国の軍事行為を許せないという意見が聞こえる。県内では名護市辺野古の新基地建設で民意に反して国は着々と工事を進めているが、諦めから来る支配的な風潮に迎合する事大主義な若者が増えているのではないか」と分析。自衛隊明記を容認する姿勢に対しては「北朝鮮や中国の脅威を強調する情報に無自覚に流されているように感じる」と分析した。ただ改憲派の中からも憲法で自衛隊を認めることを反対する回答もあった。

 高良教授は「9条を変えてはいけないという意見は依然として強い」と指摘した上で、「社会保障などの問題は改憲せずとも運用で対応できる。9条の機能については改正による影響を深く考える必要がある」と強調した。