はしか感染拡大 沖縄観光、風評防止へ ピーク時への影響懸念


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麻疹(はしか)の対策を議論した沖縄観光コンベンション推進協議会=4月26日、沖縄産業支援センター

 県内で麻疹(はしか)の流行が広がる中、沖縄経済の成長をけん引する観光業界では風評被害を防止する取り組みが広がっている。県内の感染者数は3日時点で計88人となり、はしかが理由とみられる旅行のキャンセルは同3558人に上る。昨年5月には月間74万人の観光客が沖縄を訪れており、観光関係者の間では冷静な受け止めが多い。だが、感染拡大が長引けば夏場のピーク期にも影響を与えかねず、早期の終息を望む声が強まっている。

 はしかの感染者には予防接種を1回しか受けていない人が多い、働き盛りの30代での感染が目立つ。「観光業従事者を通して観光客に感染すれば、大変な迷惑をかける」と関係者は危機感を募らせる。

予防接種呼び掛け

 日本トランスオーシャン航空(那覇市)は、はしか発生が確認された3月下旬から、空港職員や客室乗務員、パイロットなどを対象に、全額会社負担で予防接種を実施。その他の事務職員にも予防接種を受けるよう呼び掛けている。担当者は「スタッフに休みが出れば路線の運航にも影響が出かねない」と警戒した。現時点では大きなキャンセルはなく、日程変更が中心というが「感染時期が長引けば影響が出るかもしれない」と語った。

 沖縄都市モノレール(那覇市)も1日、アルバイトや契約社員を含む全職員約200人を対象に会社負担で予防接種をする方針を決めた。沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB、平良朝敬会長)や沖縄美ら島財団なども職員を対象に予防接種を行っている。2日時点では観光施設では入場者数などは平年並みに推移し、影響は確認されていないとしている。

 だが、一部旅行会社によると450人規模の国際学会や修学旅行でキャンセルも出ている。現在のところ影響は限定的とするが「5月下旬から6月にかけて、夏場の旅行予約がピークを迎える。その時期に感染動向がどうなるのか注視している。お願いだから終息してほしい」と語った。

全国的な課題

 影響拡大が続く中、OCVBなどは4月26日、業界関係者を集めた緊急対策会議「沖縄観光コンベンション推進協議会」を開いた。はしかゼロの達成に向けワクチン接種の徹底や、接種歴がある人にも抗体検査を行うことを確認し、職場内の感染を防止していく。

 平良会長は、訪日外国人客が全国的に増加する中、海外からはしかウイルスが持ち込まれた今回のような出来事は「全国どこでも起こり得ることだ」と指摘する。2019年のラグビーワールドカップ、20年の東京五輪・パラリンピックに向け、外国人客のますますの増加が見込まれる中、2回のワクチン接種率の向上や感染症の国内侵入防止対策の徹底を近く国に提言する方針だ。平良会長は「(今回の)沖縄の経験から、国に感染症リスクを低減していく対策を立ててもらいたい」と提言の狙いを語った。
 (知念征尚)