奄美・琉球 IUCNが登録延期を勧告 世界自然遺産


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豊かな自然が広がるヤンバルの森=5月2日、大宜味村(小型無人機で撮影)

 【東京】国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関の国際自然保護連合(IUCN)は日本時間の4日未明、政府が世界自然遺産に推薦した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」に対し、内容の抜本見直しを求める「登録延期」を勧告した。

 候補地が細かく分断されるなど生態系の持続可能性に懸念が残ることや、米軍北部訓練場返還地の編入計画などについても指摘があり、構成要素の再選定などを求めた。

 環境省で会見した環境省自然環境計画課の奥田直久課長は「真摯に指摘を受け止め、今後、関係機関と対応を考えたい」と話した。

 最終的な登録の可否は6月24日からバーレーンで開かれるユネスコ世界遺産委員会で決まる。国内の世界自然遺産候補地で「登録延期」という評価を受けたのは今回が初めて。

 政府は今後、推薦書の見直しをするが、当初目指していた2018年夏の登録は見送られる可能性が高い。環境省は推薦に自信を見せてきただけに、「想定外」(担当者)の結果となり遺産登録は厳しい情勢となっている。

世界自然遺産の推薦地を審査するため、やんばるの森を視察するIUCNの調査団員=2017年10月16日

 IUCNの勧告は「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階。「登録延期」は推薦書の根本的な見直しを求めるもので、再提出後にIUCNの現地調査などを再度踏まえる必要がある。次回以降に再審議する「情報照会」より時間が掛かり、登録まで早くても数年を要する。

 奥田氏によると、IUCNは2016年12月に返還された米軍北部訓練場跡地が推薦地域に含まれていないことなどを挙げ「多くの修正が必要だ」などと勧告した。奥田氏は「(見通しが)かなり甘かったと言われても仕方ない」と釈明した。

 一方で、推薦地域周辺に北部訓練場がある影響については「(勧告に)マイナスの評価を及ぼしたとは考えていない」と否定した。

 推薦地域は、本島北部と西表島、鹿児島県の奄美大島と徳之島の陸域計約3万8千ヘクタール。亜熱帯照葉樹林に多く固有種が生息し、政府が昨年2月に「生物多様性を守る上で重要な地域」として登録を推薦した。【琉球新報電子版】