膵臓(すいぞう)の腫瘍の治療に当たっている沖縄県の翁長雄志知事が公務の休養に入ってから1カ月が経過した。これまでのところ県政の業務に支障はないというものの、今後、県議会6月定例会や、6月23日の沖縄全戦没者追悼式といった大型行事を控え、治療と不在が長引けば、辺野古埋め立て承認の「撤回」という重要な政治判断への影響も予想される。公務復帰のめどや秋の知事選への対応を占う上で、腫瘍が悪性か良性かを判定する病理検査の結果について注目が集まっている。
「検査結果としてはまだ出ていないようだが、順調に回復し非常に元気だと報告を受けた。検査の説明も含めて、退院する時点で自身でしっかり会見をしたいという思いがあるようだ」(照屋大河県議)
7日、翁長知事の手術後の状況確認で県庁に出向いた県議会与党会派の代表者は、副知事からの説明を報道陣に語り、退院のめどが近く示されるという受け止めを語った。
翁長知事は4月5日に人間ドックで医師から再検査の指示があり、その日の午後から検査入院に入った。同10日に浦添総合病院で会見した翁長知事は、精密検査の結果、膵臓に2センチを超える腫瘍が見つかったことを公表した。医師と共に会見に臨んだ上で「根治する方向で治療をやっていける」と語っていた。
4月23日には富川盛武、謝花喜一郎両副知事が県庁で会見し、翁長知事が同21日に腫瘍を切除する手術を受けたことを明らかにした。腫瘍の病理検査について「2週間程度」を要するとして、検査結果についても発表するとしていた。
しかし、大型連休が明けた7日は副知事会見からちょうど「2週間後」だったが、検査結果に関する発表はなかった。
県幹部は「連休の影響で検査についても数日遅れている。県としても正確な情報をその都度発信する」と述べ、検査結果がずれ込んだための対応であることを強調。知事の健康不安を巡る出所不明の“怪情報”が出回ることに神経をとがらせている。
県内政局の天王山となる秋の知事選で県政奪還を目指す自民党は、知事選の前倒しも想定して対抗馬の選考を進めている。県政与党は翁長知事の再選出馬を前提としているだけに、照屋県議は「元気だということで安心している。知事選に向けて激励しながらやっていきたい」と強調した。
それでも腫瘍の検査結果次第では、退院後も治療に専念することで、公務への復帰に時間がかかる可能性は残る。
県幹部の一人は「副知事が決裁しながら、高度な判断は知事に判断を仰ぐことができる。現時点で仕事が停滞する状況ではない」と指摘する一方で「県民の投票によって選ばれた知事とでは説得力が違う」とも語り、知事の不在が長引けば基地問題や国庫要請といった今後の対政府交渉への影響も指摘した。(与那嶺松一郎)