トランプ米大統領がイラン核合意から離脱し対イラン経済制裁を再開すると表明したことを受けて、原油先物相場が上昇している。原油価格の動向は沖縄県内の燃料価格に影響を与える可能性もある。県内の運輸や観光関係者からは燃料価格が高騰することを懸念する声が上がった。一方で情勢はまだまだ不透明な部分も多いことから「状況を見守りたい」と冷静に受け止める意見もあった。
県内大手の石油卸会社の担当者は「一般論としては原油価格にガソリン小売り価格も連動する。(先物相場の上昇には)投機的な資金も入っていると思われる。状況を見る必要がある」と話した。沖縄電力によると、電気料金には事業者の努力が及ばない燃料価格や為替レートの影響を反映する燃料費調整制度があるため、燃料価格が高騰すれば電気料金が上昇するという。
県トラック協会の宮平仁勝専務理事は「影響がもろに出る」と懸念する。トラックが使用する軽油の県内店頭現金価格は2017年2月の1リットル当たり税込み115円から、ことし2月では132円に上昇した。「船や飛行機と違い、トラックは燃料費の高騰分を運賃に転嫁しづらい現実がある。軽油価格がさらに上昇すれば、人手不足による人件費の上昇とあいまって負担が大きくなる。値上がりしないでほしい」と切望した。
沖縄観光総研の宮島潤一代表は「短期的には燃油サーチャージなど航空運賃への影響が考えられる。沖縄観光はレンタカー利用に頼る実態もあり、石油価格の上昇は好調な観光に水を差しかねない」と懸念する。来沖する外国人客の多くを占める、アジア諸国の経済成長にも影響を与える可能性も指摘した。
操業に多くの燃料を使う漁業関係者も心配する。那覇地区漁業協同組合の山内得信組合長によると、大型のマグロはえ縄漁船の場合は1回の航海で燃料を約4万5千リットル、平均的な船でも約3万リットル消費するという。「1リットルで1円上がれば、3万~4万円経費が上がる」として、漁場が遠くなる夏場に向け価格変動を注視する。
りゅうぎん総合研究所の久高豊専務は、今後原油価格がさらに上昇すれば、運輸業など燃料を使う業界は直接的な影響を受けるとして「コスト高が波及し、一般物価が上がることで県民にも影響が出かねない。現在でもすでに人件費や原材料費上昇の影響はあって、各業界は小売り価格にどうやって反映させるかに頭を悩ませている。仮に急激に価格が上がると影響はより大きくなる」と指摘した。