北部訓練場跡 土壌汚染 米軍廃棄現場から農薬 生態系への影響懸念


この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社

 2016年12月に部分返還された米軍北部訓練場の跡地の土壌から、毒性が強く国内で使用が禁止されている農薬のDDT類が検出されたことが18日までに分かった。調査した名桜大学の田代豊教授(環境科学)は「米軍が不適正に廃棄した可能性が高い」と分析した。DDTと同じように殺虫剤として使用されたBHC類(リンデン)も検出された。沖縄防衛局が実施した調査で検出されなかった汚染があることが示された。

 調査した土壌は、国頭村安田の返還跡地内の約100平方メートル。同じ場所からは米軍のものとみられるタイヤや金属類などの廃棄物も見つかっている。廃棄物を見つけた宮城秋乃さんが表面の土を採取し、田代研究室が調査した。今回の調査はDDT類、BHC類のみで、ダイオキシン類、重金属類など他の有害物質については調査していない。

 検出されたDDT類は、1キロ当たり0・06ミリグラム。環境省の環境管理指針値(1キロ当たり50ミリグラム)と比較すると検出濃度は低く、汚染が直接住民の健康に影響を与える可能性は低いとみられるものの、DDTは分解しにくいため、生物・生態系への影響が懸念される。BHC類は0・003ミリグラムだった。

 田代教授は「DDTとBHCは自然界に存在せず、通常の殺虫剤として散布された程度であればこのような数値が検出されるとは考えにくい。薬品が他の米軍廃棄物とともに廃棄されていた可能性が高い」と指摘した。

 DDTは日本では1970年代から使用が禁止されている。県内では浦添市の米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の土壌でも検出され、米軍の不適正な処理が指摘された。

 北部訓練場は約7500ヘクタールのうち約4千ヘクタールが返還された。沖縄防衛局は17年7月までの8カ月間、跡地利用特措法に基づき土壌と水質の汚染調査を実施した。DDTは同法で定められた調査では対象外となっている。

 沖縄防衛局は返還地の土壌調査について「外部有識者の監修の下、調査手法を検討の上、調査を実施し、返還地では比較的良好な土壌および水質環境が保たれているとの結果を得ている」と本紙に回答した。(清水柚里)