米海兵隊普天間飛行場が2013年と15年に出した環境汚染事故への対処に関する内部通達で「緊急事案以外や政治的に敏感な事案」は日本側に通報しないよう指示していたことが分かった。一方、琉球新報は普天間飛行場や米空軍嘉手納基地で過去一定期間に発生した有害物質の流出記録も情報公開で得たが、大規模な流出や基地外流出の場合にも日本側に通報していなかった事案が複数確認された。実際の流出量が通報内容を大きく上回る場合もあり、汚染事故を巡るずさんな通報体制が浮き彫りになった。
琉球新報の情報公開請求に普天間飛行場が開示した指示書「流出防止・対応計画」の13年版や15年版は「汚染物質が基地外に流出し、住民や財産、飲み水などの脅威となる緊急事態」を除き、政治的に敏感な事案を「日本の当局に直接伝えない」よう指示している。15年版は日本側に伝える場合は「外交政務部(G7)や広報部門の承認」を得るよう求めている。
一方、琉球新報が米軍への情報公開請求で得た記録によると、嘉手納基地(弾薬庫含む)では10~14年に少なくとも152件の有害物質の漏出事案が発生したが、県が把握していたのは10件だった。普天間飛行場では05~16年に少なくとも166件の有害物質の漏出があったが、県が把握していたのは6件だった。米側の記録が極端に少ない年もあり、実際はより多く発生している可能性もある。
日米両政府が合意している「日本環境管理基準(JEGS)」は、400リットルを超える有害物質の流出などを「大規模な流出」と定義している。
米軍は12年8月には発がん性などが指摘される消火用泡材1135リットルの流出を日本側に通報した。だが13年12月4日にはその倍の量が流出し、基地外にも流出したが、通報はなかった。
12年6月27日には「100~200リットル」の汚水が流出したと県に通報があったが、米軍の資料には流出量は30万リットル超に上ったと記録されていた。12年12月22日には航空機燃料約150リットルが漏出し、比謝川にも流れ込んだと記録しているが、日本への通報はなかった。
普天間飛行場でも泡消火剤が05年に約1900リットル、07年にも190リットル(基地外に流出)漏れる事故が起きていたが、日本側は把握していなかった。泡消火剤は発がん性物質であるPFOS有機フッ素化合物(PFOS)を含む可能性があり、普天間周辺で高濃度のPFOSが検出されているが、米軍は基地内の立ち入り調査を拒否している。
約1140リットルの航空機燃料流出(05年10月)も通報されていなかった。 (島袋良太)