「はいたいコラム」 バリのヤギ料理に感動


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 島んちゅのみなさん、はいた~い!前回、インドネシア・バリ島の棚田を訪ねた話を書きました。きょうはその続きです。旅の3日目、バリ伝統舞踊と呪術的な男性合唱ケチャを鑑賞した帰り、ドライバーのアルタさんに地元の食堂に行きたいとリクエストしました。アルタさんは42歳、妻と2人の子を持ち、日本語と英語が話せます。

 ウブドの街はずれ、店先でじゅうじゅう煙を上げてサテ(串焼き)を焼いている食堂の前に、アルタさんが車を止めるがいなや、わたしは香りの充満する店内に吸い寄せられました。若い女性や家族連れが焼き鳥定食のようなセットを食べています。勧められるがまま、サテ10本(多い!)とご飯とスープの定食51000ルピア(約400円)を注文しました。

 まずグリーンカレーのようなスープをいただくと、ココナッツミルクが効いてとっても美味!骨付き肉をすくって食べると、鶏肉ではなさそうです。「あれ?何のお肉だろ」つぶやくと、アルタさんは言いました。「ヤギです。」「えええー!?ヤギスープなんですかー。めちゃくちゃおいしいー。ってことは、もしかしてこの串焼きも?」「はい、ヤギのサテです。」

 なんとこちら、ヤギ専門の食堂だったのです。ヤギサテはみそ田楽ぐらいたっぷりコクのあるピーナッツソースに漬け込まれ、臭みが全くなく食べやすいお肉です!わたしはヤギ肉が好きで、沖縄でも山羊刺しやヒージャー汁を何度かいただいていますが、品種の違いでしょうか、食べてすぐにはか分からないほどクセのない味でした。

 「日本でもヤギを食べますよ。私はヤギの取材もしているんです」というと、アルタさんはうれしそうにどんどんヤギの話をしてくれました。

 なんとアルタさんは8歳のころからヤギを最大28頭飼っていたそうです。両親の手伝いではなく自分の仕事として、日曜になると友達とヤギを連れて川遊びをしたこと、月に数頭ずつ出荷し、家計の足しにしていたことを話してくれました。中学を出て働きながら日本語を学んだそうです。

 ヤギを育てて家族の暮らしを助ける。改めて東南アジアの島々におけるヤギの価値と重要性を知りました。アルタさんに、日本に行ったらどこへ行きたいか訪ねると、雪を見たいそうです。沖縄のヤギを味わってもらうのはだいーぶ先になりそうですね。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)