「異常少雨」農家を直撃 南大東 水の安定確保切望


この記事を書いた人 琉球新報社

 【南大東村で当銘千絵】3月20日以降ほとんど雨が降らず、1日現在も深刻な干ばつと水不足に見舞われている南大東村。例年夏期の少雨と干ばつは想定内だが、梅雨にもかかわらず雨の降らない状況に、村民は「異常事態」だと口をそろえる。村の基幹作物サトウキビも十分な栄養が行き届かないため生育状態が悪く、農家や製糖業者らは「このまま干ばつが続けば歴史的大打撃を受けかねない」と頭を抱える。

塩分濃度の低い池の上層部からくみ取った水を農業用水として活用するサトウキビ農家の吉里正清さん=1日、南大東村

 沖縄気象台によると3~5月の村の降水量は63ミリで平年比の15%にとどまる。5月はわずか18・5ミリだった。村にとって、梅雨は乾燥する夏に向けて農業用水を確保する重要な時期だが、村のダム貯水率は5月25日時点で28%まで落ち込んだ。

 村や製糖業者が30日に実施したサトウキビの生育調査でも、多くが発芽できていないことが分かった。年間5万5千~6万トンで推移する生産量も、村産業課の川満廣司課長によると、このまま干ばつが続けば最悪3万トン台になる可能性もあるという。役場には連日、農家から悲痛の声が寄せられている。

 「水をまきたくても貯水池になく、雨乞い以外に手がない」

干ばつにより地割れした畑を前に「豊富な海水を農業用水として利用できるような施設を整備してほしい」と訴える大城健実さん=1日、南大東村

 サトウキビ農家の大城健実さん(33)=南区=は、灼熱(しゃくねつ)の太陽に長期間さらされ乾き切った畑を見つめ嘆く。手塩にかけて育てたサトウキビも、5月中旬ごろから一部が葉を丸め水分の蒸発を抑えるロール現象を起こしている。生育状態が悪く、乾燥した葉を好むバッタやメイチュウなどの害虫被害がさらに追い打ちを掛ける。天気予報を見つめ「明日こそ降ってくれないと本当に困る」。恵みの雨を待ち望んでいる。

 久々の雨に備え、大城敏弘さん(32)は黙々と畑に肥料をまいていた。雨が降れば栄養分が土壌に浸透し、サトウキビが根っこから栄養を吸収するためだ。

 今回の異常事態は、農業歴50年超の吉里正清さん(75)も危惧する。「農作物にとっては水が命」。島全体で農業用水が安定して確保できるような施設整備の必要性を指摘した。