「はいたいコラム」 消費者団体がつくる鶏肉


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 先日、名古屋で「国際養鶏養豚総合展(IPPS)」という養鶏・養豚における国内最大の展示会がありました。世界最先端の機械、施設や技術など、国内外から200社が出展しました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックや輸出拡大に向けて日本の食料生産は、「持続可能な調達」が大きなテーマとなっています。認証制度としてGAPや農場HACCPなどがあり、畜産ではアニマルウェルフェア、エコフィード、放牧、労働環境の改善、オーガニックなどが推奨されていますが、近ごろよく聞く「持続可能(サスティナブル)」な消費と生産について考えました。

 生産者と消費者が一緒になって食べものを育て、買い支えていく関係は、欧米ではCSA(コミュニティがサポートするアグリカルチャー)と呼ばれ、環境問題やオーガニック、健康志向の消費者に定着しています。実は日本にもこうした消費者団体や生活協同組合は千を超えます。そのうちの「生活クラブ」は、生産にも関わる異端の消費者団体としてテレビで紹介されていました。純国産鶏「はりま」を使用して開発した「丹精國鶏」は、山口県山口市の「秋川牧園」に生産を委託しています。直営店に買いに来る組合員の女性は、味もさることながら、「みんなで支えて食べていかないと、生産者に作ってもらえなくなる」と、話していました。

 食べて支えようと、生産者と一体となる考えを持つ都会の消費者がいることに、わたしは感動しました。消費者だって受身なだけでなく、積極的に意見も言い、よい生産に関わりたい。社会をよりよく変えていきたい!与えられるだけでなく自立した生活者でありたいと思っている人は、少なくないということです。社会にも喜ばれる「三方よし」の関係で、自立した生産者と自立した消費者が出会えば、互いを刺激しながら成長していけます。

 さっそく近所の直営店で「丹精國鶏」のもも肉(190円/100g)を買いました。塩こしょうでソテーすると、ほどよい噛みごたえに肉のうまみがしっかりあり、おいしい鶏肉です。多少割高でも、意志のある人たちが心を込めて作った食べものにお金を払いたい。その輪に加わること自体が心地いい。消費者と生産者が手を取り合い、味はもちろん心もハッピーになる関係こそサスティナブルだと思いました。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)