「はいたいコラム」 縁側カフェはじめよう


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 島んちゅのみなさん、はいた~い!6月15日に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されました。これまでの農家民宿と比べ、費用や手続きの手間が少なく、離島や農村に人を呼び込むチャンスです。一方、宿泊にはそれなりの準備が必要で、受け入れたくても家に入られるのはちょっと…という方もいるでしょう。

 ところで、みなさん、「縁側カフェ」ってご存知ですか?静岡で始まった取り組みで、農家の縁側でお茶を提供し、手作りのお茶請けでもてなすサービスで、民泊ならぬ“民カフェ”です。その発祥の地、静岡市葵区大間を訪ねました。

 オクシズと呼ばれる中山間地で、市街地から車で1時間半、標高800メートルの天空の下には一面の茶園が広がり、5軒11人のうち4軒が茶農家です。きっかけは10年前、地域にあった直売所が過疎や高齢化で続けられなくなり、ならば個々の自宅に人を招こうと、集落の5軒が一緒になって始まりました。

 その提唱者が、静岡大学名誉教授の小桜義明さん(73)。調査で通ううち、この地にとけ込み移住までした地域政策の専門家です。茶飲み話をして、畑の野菜やお茶を並べれば、縁側は、憩いの場にも地域のアンテナショップにもなります。月2回開催する日曜には、遠方から何十組も訪ねてくるそうです。

 さっそく、中村敏明さん(59)、光子さん(82)の縁側にお邪魔しました。ふかしたサツマイモ、干しシイタケやダイコンの煮物と漬物の3品が並び、これでお休み料300円です。煎茶は茶葉の上に氷を置き、冷水をほんの少し注ぐ“氷出し”で、一煎目を口に含むと、凝縮された旨みに驚きました。

 隣の集落の内野清己さん(59)のお宅では縁側どころか、お茶席に掛け軸までしつらえた風雅なお茶会で、シャンパングラスに注いだお茶の味も香りもあまりの洗練ぶりに感動しました。聞くとこの地域は鎌倉時代から続くお茶の聖地だったのです。

 地域資源はそれぞれ。農泊の実証実験として、まずは縁側の解放から始めてはいかがでしょう。サンピンカフェ、チャンプルカフェ、山羊カフェ、マンゴーカフェ、地元の農産物やごはんこそ旅人を感動させる地域らしさです。

 さあ、座ぶとんと特産を並べれば、縁側は島の文化を見せるステージにもなり得るでしょう。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)