<解説>
F15墜落事故を受けた「飛行停止」を巡り、25日の参院予算委員会や27日の党首討論では安倍晋三首相による論点のすり替えが目立った。
実際には政府がF15の飛行停止を求めていないにもかかわらず、首相はあたかも政府の申し入れの結果、米軍が飛行停止したかのような説明を党首討論でも維持した。実際に飛行停止を求めていないという「うそ」(立憲民主党の枝野幸男代表)を訂正しなかった。
あくまでも論点はF15墜落事故に関する「飛行停止」であるはずだった。だが、参院予算委でも党首討論でも、首相はやりとりの後半で過去に安倍政権が飛行停止措置を求めた事例を持ち出すことで、論点をすり替えた。民主党政権時代への批判を織り交ぜ、自身の“実績”を強調する手法はこれまでの国会答弁でも見せてきたパターンだ。
党首討論では、政府が飛行停止を申し入れ米側が停止した事例として、2013年のHH60ヘリ墜落事故や17年10月の東村でのCH53ヘリ不時着炎上などを挙げ、17年12月の普天間第二小窓落下事故でも米軍が停止措置を取ったと付け加えた。だが普天間第二小の事故の時は、実際には政府は飛行停止を求めていない。
いずれも飛行停止は短期間にとどまり地元の納得するものではないが、政府があたかも取り組んでいるような姿勢を演出する説明は、首相がこれまで国会で野党を批判する際に用いてきた「印象操作」に映る。首相は答弁を修正するどころか、開き直って見せた。
(當山幸都)