災害避難のマニュアル改訂 高齢者や障がい者対象に バリアフリーネットワーク会議


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「逃げるバリアフリーマニュアル」改訂版を紹介するバリアフリーネットワーク会議の親川修さん=沖縄市照屋の事務所

 【沖縄】NPO法人バリアフリーネットワーク会議(沖縄市、親川修理事長)はこのほど、「逃げるバリアフリーマニュアル」改訂版を発刊した。高齢者や障がい者の観光客に着目し、災害時の避難や誘導方法、障がい者によって異なる対応などを写真付きで紹介している。改訂版では、マニュアルを基に宿泊施設などが独自で避難訓練をしやすいよう避難時に必要なワークシートや持ち物リストの掲載、障がい者への理解を深めるため、さまざまな症状や当事者の話などを追加した。

 親川さんは「災害はいつ起きるか分からない。観光立県の沖縄だからこそ、常に意識を持たなければならない」と、宿泊施設や集客施設などでの活用を呼び掛けている。

 親川さんは「健常者と障がい者、高齢者(の避難環境)は平等ではない」と指摘する。2011年の東日本大震災で、障がい者の死亡割合は、住民全体の2倍に上るという。

 障がいが先天性か後天性かなど個々の状況や障がいによっても災害時の対応は異なるといい、個々の症状に合った適切な対応が取れるよう、改訂版には聴覚障がい者や視覚障がい者らの意見も掲載した。

 また、発達や精神、視覚障がいなど症状によって異なるコミュニケーション、誘導法なども写真を多用し、より詳細に説明を加えるなど充実させた。

 バリアフリーネットワーク会議が、16年度に県内宿泊施設で実施した避難訓練の結果によると、火災発生時障がい者や高齢者の避難所までの移動時間は、健常者に比べて最大約5倍の時間を要することが分かった。一方で、訓練を繰り返して実施することで、一般的な限界時間とされる9分以内での避難も可能となることも実証できたという。改訂版では、これら避難訓練をすることによって得た情報や、参加者からの疑問、障がい者がどこに不便を感じるかなどの声も改訂版には反映させた。

 約5年ぶりの改訂で、ページ数は初版の約2倍の115ページに増えた。

 親川さんは「超高齢化社会が叫ばれる中で、観光客の中にも高齢者や障がい者が一定程度いる。そうした方々の対応を考え、訓練することは、観光の危機管理対策と同じ。どのような利用者に対しても平等でなければならない」と、障がい者や高齢者の避難対応も含めた観光の整備を訴えている。