翁長雄志沖縄県知事の1期目の任期となる12月9日まで残り5カ月を切った。4月に膵臓(すいぞう)癌の手術を受け、本格的な公務復帰に向けて治療を続ける中で、再選出馬の可否が焦点となる。最大の選挙公約である米軍普天間飛行場の辺野古移設阻止を巡っては、政府が通知する8月17日の土砂投入の前後に、埋め立て承認の撤回に踏み切るかどうかに注目が集まっている。
9日午前、台風8号の接近に備え、翁長知事を議長とする県災害対策本部会議の会合が開かれた。当初は副知事が議長役を務める予定だったが、翁長知事自ら出席し、全部局長に各担当分野の取り組みを報告させるなど会議を仕切った。
県幹部は「前より健康になってきている感じだ。(災害対策本部の出席も)折々に県民に姿を見せる必要があると考えているのではないか」と語った。
6日に閉会した県議会6月定例会でも、治療に専念すべきだという声がある中で、翁長知事は予定していた出席日程をこなした。県議会では11月1日告示、同18日投票の日程が決まった県知事選を巡る答弁にも注目が集まった。だが翁長知事は「与えられた責務を全うする」と述べるにとどめ、2期目について態度を明らかにしていない。
出馬を明言しないことで健康不安説は依然として残るが、知事周辺は「相手候補も決まっていないし、分裂の可能性も言われている。現職がわざわざ先に動きを見せて敵に手の内を明かすことはない」と意に介さない。
2期目の対応に加え、任期中に決断を迫られるのが「撤回」だ。翁長知事はこれまで、辺野古埋め立て承認を任期中に撤回すると公言してきた。しかし、残す任期はあと5カ月まで迫り、沖縄防衛局が8月17日にも現場に土砂の投入を始めると通知するところまできた。県政与党の県議は「現場で阻止行動を続ける市民の間では、撤回に踏み込まずにきた県の慎重姿勢に不満がある」と語る。
県幹部は「一番重要な知事選へどういう流れをつくるか。撤回は絶対すると言っている。これはやる。あとはいつがいいかだ」と語り、撤回の時期について「高い政治レベルの判断」として、知事自ら決断することを示唆した。
(与那嶺松一郎)