子ども時代に沖縄戦や南洋戦を経験し生き延びた戦争体験者の証言を聞く企画「戦災被害の元子供たちを囲むゆんたく」(戦場体験放映保存の会、沖縄・民間戦争被害者の会主催)が14日、那覇市の県立博物館・美術館で始まった。16日まで。戦争体験者1人に対し、戦後生まれの世代数人がグループを作って対話しながら戦争体験を聞いた。戦争体験の証言を展示した「体験談パネル展」も同時に開催された。
戦場体験放映保存の会は、2016年ごろから東京などで「茶話会(さわかい)」と題して地元の戦争体験を少人数で聞く場を設けてきた。沖縄での開催は初めて。事務局次長の田所智子さんは「少人数で話すことで、話し手の人柄などもより聞き手に身近に感じられる。話し手も話しやすい」と利点を強調した。
3日間で計約20人の戦争体験者が少人数のグループに分かれて戦争体験を語る。初日の14日に戦争体験を語った野里千恵子さん(82)は1944年の10・10空襲で祖母を亡くし沖縄戦で父が犠牲になった。野里さんは「戦争は人の命を当たり前のように奪い、苦しめる。繰り返してはいけない」と強調した。
戦前、家族でパラオに住んでいた柳田虎一郎さん(80)は、44年9月ごろ、日本へ軍艦で帰る途中、米潜水艦で攻撃を受け、たどり着いたフィリピンのミンダナオ島で母や弟を亡くした状況などを証言した。同島で食糧を運ぶ避難民の日本人女性を日本兵が銃剣で刺殺し、強奪した場面にも遭遇したことも語った。
柳田さんの戦争体験を涙ぐみながら聞いた高橋えりさん(42)=那覇市=は「母は柳田さんの2歳下で、戦争中に同じミンダナオ島のジャングルを逃げた」と母が置かれていた状況に思いをはせ、「具体的な話が聞けて、とても貴重な体験になった」と語った。
「戦災被害の元子供たちを囲むゆんたく」は15、16の両日とも午前10時半、午後1時、午後2時半の1日3回行われる。「体験談パネル展」は午前10時から午後5時まで。沖縄戦や南洋戦争の体験者35人の証言などを紹介している。
問い合わせは戦場体験放映保存の会(電話)090(2165)0220。