沖縄戦戦没者の遺骨収集に参加している浦添市の西島恵歴さん(27)が4月下旬に糸満市米須の日本軍壕跡で発見した「金持清」の名前が書かれた万年筆の持ち主の遺族が、このほど見つかった。秋田県出身で沖縄戦に動員されて戦死した金持清(かねもちきよし)さんの長男・金持健夫さん(75)=神奈川県=が11日、家族らと共に、清さんの万年筆が見つかった日本軍壕跡を初めて訪れた。
万年筆の持ち主だった金持清さんは、秋田県尾去沢町で1916年2月に生まれた。宮城県や東京都での生活を経て29歳の時に旧日本軍に動員され、沖縄戦で戦死したという。長男の健夫さんは当時2歳で父の記憶はほとんどなく、写真でしか見たことがない。親戚からは「まじめな人だった」と聞いている。
西島さんが万年筆の持ち主や遺族を探していることを紹介した河北新報の記事を読んだ知人が、健夫さんに連絡。父の万年筆が見つかったことを知った健夫さんは、西島さんと連絡を取り合い、5月に東京で万年筆を受け取った。11日には妻の咲美さん(73)、千葉県に住むいとこの隆さん(70)、その妻の恵子さん(69)の計4人で来県し、万年筆が見つかった壕跡に足を運んだ。
父の清さんがどのような最期を遂げたのか具体的なことは分かっていない。健夫さんは「手元に届いて感謝している。現地へ行き、戦争は人の命を奪うとんでもないことだと改めて感じた」と語る。
健夫さんの母・トヨさんは、夫の清さんのことを話すことは少なく、昨年4月に亡くなった。健夫さんは「もう1年早く見つかっていれば」と悔やみ、父の生きた証しとなる万年筆を見つめた。