琉球新報社 第１００回全国高校野球選手権沖縄大会第１２日は２２日、沖縄県那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇で準決勝を行い、昨年準決勝で涙をのんだ糸満と昨年の覇者で第２シードの興南が勝ち、甲子園の切符を懸けて２３日、同球場で対戦する。糸満の決勝進出は３年ぶり６度目、興南は２年連続２０度目。同カードの決勝対決は２０１５年以来４度目となる。ノーシード同士の戦いとなった糸満―北山戦は五回まで投手戦となった。六回に糸満が２死一、三塁から７番・金城龍史郎の先制適時打を皮切りに安打を続け５点を先行。その後食らい付く北山打線を２点に食い止め逃げ切った。４強の中で最少の４失点で勝ち上がってきた興南は先発の藤木琉悠が低めの制球が決まり、今大会４１得点の強力な嘉手納打線を封じた。打線は二回に根路銘太希の三塁打などの打者一巡の猛攻で５点を挙げるなどし、７―２で嘉手納に勝利した。決勝は午後１時から行う。
◆２死から猛攻５点／糸満
雲の影が本塁側へ流れる向かい風の中、外野を越えそうな長打は上空で勢いを消され、フライアウトになる。共に打線活発な糸満と北山は投手戦を続け、風船がはじける直前のような緊張感が球場に漂い続けた。「この均衡を先に破った方が勝つ。後半４イニングが勝負だ」。真玉橋治監督はその時を待った。
四回、１死二、三塁、北山が先に仕掛ける。先発投手の金城龍史郎は駆け出す三走に気づかないが、引っかけすぎたスライダーが「運よく外の厳しいコースにいった」と右打者のスクイズを外し、運も味方につけて三走を挟殺。次打者も「狙っていた」と三振で失点を防いだ。
次に仕掛けたのは糸満。六回、四球と犠打などで２死一、三塁。準々決勝で４安打５打点と勝負どころに強さを見せた７番金城がこの日も期待に応え中前打。これに相手ミスが絡み２点を先行した。
一塁側の応援団が沸き立ち、流れは一気に傾く。８番兼城陽、９番金城絢也、１番山城裕貴の連続適時打で一挙５点。「集中打で勝ってきたが、２死から５点も取るとは。子どもたちの力はすごいね」。指揮官は想像以上の底力を喜んだ。
毎試合ある失策が課題だが、守備でミスした兼城と山城が「これで終われない」と適時打で勝利を引き寄せるなど、切り替えも早かった。七回に主戦の金城の足がつると「後は任せてくれ」と、捕手の大城勇稀が金城をベンチに下げ、「リードしても逃げずに攻めよう」と継投の玉城宙夢と辺土名駿を好リードし、２失点で踏みとどまった。
緊迫感ある試合を乗り越えた主将の大城は「あと一つで甲子園。粘り強い糸満野球を明日も続けます」と気を引き締めた。
（嘉陽拓也）
◆破壊力見せつける／興南
興南の強みは層の厚い投手陣や堅い守備だけではない。試合前に「きょうは打ちまくって大差で勝つぞ」。そう誓ったナインが、序盤から打者一巡の猛攻で５点を奪うと、集中打を得意とする嘉手納を一気に突き放した。破壊力のある興南という新たな側面を見せつけた快勝だった。
相手の強みを消し、ロースコアで勝ち上がってきた興南。これまで堅守の影に隠れていた打線が二回、トップギアに入る。１死一塁から大会初起用の７番の１年・西里颯が「出場できて幸せ。何としても監督の期待に応える」と左前打で１死一、二塁。８番里魁斗の中前打に敵失が重なり、二走が生還して先制した。
９番藤木琉悠が倒れ２死二、三塁。ここで準々決勝から打撃好調の１番根路銘太希。「しっかり壁をつくるスイングに修正し、球を見極めて打ち分けた」と右翼深くに打ち返す三塁打で２人が生還した。勢いは止まらず、さらに２連続四球の後、塚本大雅が４番の意地を見せる左前打で２点を稼ぎ、主導権を握った。
「これで楽になった」と先発投手の藤木が変化球で嘉手納をかわした。嘉手納が１点返せば１点を追加しリードを維持すると、八回から継投した當山尚志が締めくくった。
攻守に隙が無くなった興南。我喜屋優監督は「藤木が練習の成果を発揮し、根路銘は広角打法を使い、先頭打者として理想的。練習から成果を出す西里は将来を見越しての出場だ。捕手遠矢も緊張感ある展開でよくリードした」と次々と活躍した選手の名前を挙げ、役者の多さに胸を張る。手応えをつかんでの決勝は「塁に出さない、進ませない、本塁へ返させない」と興南野球を貫徹して勝ちにいく。
（嘉陽拓也）
＜２２日の結果＞
▽準決勝
糸満 ６―２ 北山
興南 ７―２ 嘉手納
＜２３日の試合＞
▽決勝
【セルスタ】１３時
糸満―興南
