高校野球の第100回全国選手権記念沖縄大会最終日は23日、沖縄セルラースタジアム那覇で決勝を行い、第2シードの興南が5―0で糸満を制して2年連続13度目の優勝を飾った。興南の甲子園出場は2年連続12度目(1967年は南九州予選敗退)。決勝は先発した宮城大弥が伸びのある直球と切れのある変化球を駆使し、初回から糸満打線を沈黙させた。被安打2で二塁を踏ませない好投だった。
興南は二回に2本の長打がつながり先制すると、五回と八回には相手内野手の連係ミスなどもありつかんだ好機を生かし、2点ずつを奪った。守備に失策はなく、九回は無死から糸満にこの日2本目の安打を打たれたが、直後に併殺で切り抜け、集中打を得意とする糸満打線に反撃を許さなかった。
阪神甲子園球場で行う全国高校選手権大会は8月2日に抽選会が行われ、5日に開会式を行い開幕する。記念大会となる今大会は全国から史上最多の56校が出場し、決勝は21日の予定。
◇宮城圧巻、2安打完封
投手層の厚さを誇る興南の中でも、特に生きのいい2年生左腕の宮城大弥が、集中打が持ち味の糸満に好機をつくらせずに完封した。被安打2、打者27人で抑える完璧な投球。「強気の攻めで内外、緩急使い分けた投球がこの結果につながった」と納得の表情だった。
前日の準決勝は左翼手だったが、攻守交代時のキャッチボールから振りかぶり「投げたいアピールをしていた」宮城。我喜屋優監督も意気込みを理解し、決勝前に先発起用を発表。「ありがとうございます」。感謝の言葉とともに、待ちに待ったマウンドに立った。
「腕は振れている。直球も伸びて変化球も切れている」。数球で感触をつかむと、ストライクをどんどん先行させ糸満打線を3人で打ち取っていく。緩急を使い分ける宮城に、捕手の遠矢大雅も「今日はすごい。全て構えたミットにくる」と宮城のペースに任せた。
好投を続ける宮城の姿は、昨年の沖縄大会決勝、美来工科戦の13奪三振と重なるが、この1年の成果が上乗せされていた。去年は甲子園1回戦で智弁和歌山に6点のリードを覆されて敗退。先発した宮城は本塁打も浴びて降板した。「速球だけでは勝てない」。蓄積した疲労を取る休養期間を終えると、冷静に緩急とコースを使い分ける投球術を磨いてきた。この日は三振こそ八つだったが、96球、隙のない内容で強打の糸満を封じた。
好投を続ける中、仲間にも我喜屋監督にも「完投できるか」と聞かれ、バックも自分も信じ「九回までいきます」と宣言。言葉通り、崩れることなく最後の打者を見逃し三振に取ると、駆け寄る仲間を笑顔で受け止め、勝利の喜びを分かち合った。2度目の甲子園。去年の自分を超えるため「一勝一勝を重ねて絶対に優勝したい」と大舞台での活躍を誓った。 (嘉陽拓也)
◇糸満 強打発揮できず
昨年、興南に準決勝で敗れ、リベンジを狙った糸満だったが、課題のエラーが失点につながり、持ち味の強打も封じられ、二塁すら踏めなかった。真玉橋治監督は「失策は想定内で打撃でカバーしたかった。打てなかったことに尽きる」と完敗を認めた。
興南の左腕・宮城大弥対策のため、右打者中心の打線で挑んだ。前半は変化球狙いだったが、内外角にしっかり制球された切れのあるスライダーに手が出なかった。直球に狙いを変えると六回2死から9番・金城絢也が外角高めの直球を中前打とし、初安打で出塁した。さらに足でかき回そうと今大会初めての盗塁を試みたが、失敗に終わった。
春季大会は初戦敗退し、積極的な打撃により磨きをかけ臨んだ今大会。準決勝までの全試合で6得点以上を挙げ、強力打線で打ち勝ってきた。大城勇稀主将は「あと一勝で甲子園という重圧や会場の雰囲気にのまれてしまい、思い通りのプレーができなかった」と残念そうに振り返った。
3年生の集合写真を撮っている様子を見た2年生の山城裕貴は「先輩たちともっとやりたかった」と唇をかんだ。「準優勝は来年にもつながる。絶対に甲子園に出る」。力強い言葉で前を向いた。 (屋嘉部長将)