泊魚市場、県漁連が糸満移転推進要請へ 議論打ち切りあす総会


この記事を書いた人 Avatar photo 高良 利香
買い受け人らがマグロを競り落とす競り=2015年6月、那覇市港町の泊魚市場

 泊魚市場(沖縄県那覇市港町)の競り機能を糸満市に移転する計画で、県漁業協同組合連合会(県漁連、上原亀一会長)が糸満移転の是非を巡る議論を打ち切り、計画推進を県に要請する方針を固めたことが分かった。24日までに理事会で承認した。26日の臨時総会で承認されれば、県は2019年度の概算要求に盛り込む方針で、長年停滞していた移転計画が進む可能性がある。しかし、那覇地区漁協や県近海鮪(まぐろ)漁協など地元漁協の反対は根強く、順調に進むかは予断を許さない。

 泊魚市場の糸満移転は、2000年ごろから計画され、県が推進してきた。老朽化した泊漁港の再整備や食の安全性に対応した高度衛生管理型市場の整備を掲げている。

 県は12年に糸満移転に向け、施設の基本・実施設計費を計上したが、県漁連などを含む関係者の合意が得られずに予算執行できなかった。16年には概算要求にいったん上げたが、那覇地区漁協などの合意が得られずに取り下げた。

 今年6月に開かれた県漁連の通常総会では、移転計画に反対する那覇地区漁協の山内得信組合長ら地元漁協が計画を再考するよう提案した。県漁連に対して泊案と糸満案を検討して会員に説明することを求め、一時は県漁連の上原会長も同意した。

 上原会長は、提案を受けて泊で新市場を整備する可能性を県漁連内で検討したと説明した上で「泊で早期に実現する可能性はなく、議論する余地がないと判断した」と述べた。会員に説明する場を設置する必要はないとして、糸満移転を進める考えを示した。

 県は8月の概算要求に初年度の実施設計費を盛り込んだ上で2~3年の工事で新市場を完成させる計画としている。(大橋弘基)

< 解説 泊魚市場、糸満移転決議へ 合意形成は不透明 >

 停滞してきた泊魚市場(那覇市港町)の糸満移転計画が動きそうだ。県漁業協同組合連合会(県漁連)は計画に反対する団体がある中でも強行突破する構えだ。だが、糸満移転が国庫補助事業として採択されるには、関係者の合意形成や年間約8千トンの水揚げ量の確保などが要件となる。その関門を乗り越えられるかが今後の焦点になる。

 県が糸満市に移転して建設を目指す高度衛生管理型市場は、鳥獣などの侵入を防ぐ密閉型で、衛生面に配慮した施設。食の安全への関心の高まりで全国や海外で整備が進められている。魚市場の統合を進める水産庁の方針もあり、県は新たな水産拠点となる市場建設を目指す。

 移転計画を進めるための最大の関門は「合意形成」だ。過去には県漁連内の合意形成ができないことを理由に県は予算計上や執行を断念した。臨時総会の多数決で「合意形成」を満たしても先行きの不透明さは拭えない。移転に反対する那覇地区漁協の山内得信組合長は、高齢化する漁業者が糸満へ冷蔵庫などの設備を移転する負担の大きさも指摘する。

 さらに国庫補助要件には、水揚げ量が年間約8千トンを上回らなければならない。泊魚市場の年間取扱量は約7500トンとされ、移転に反対する那覇地区漁協や県近海鮪漁協など6団体がこの6割を占めるとされる。県は「水揚げの状況は今後、変わる可能性もある」として8千トン要件を満たすのは不可能ではないとするが、不確定要素もありそうだ。

 新市場の必要性は立場の異なる漁業者も認める。だが長年もつれてきた議論を解きほぐし、合意形成を実現するのは容易ではない。(大橋弘基)