泊市場の糸満移転を承認 沖縄県漁連、県に要請賛成多数 市場分裂の可能性も


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競り機能の糸満移転が計画されている泊魚市場。競りに向けて水揚げした魚が並ぶ泊魚市場=27日早朝、那覇市港町

  県漁業協同組合連合会(県漁連、上原亀一会長)は26日、那覇市の水産会館で臨時総会を開き、泊魚市場(那覇市港町)の競り機能を糸満へ移転する計画の推進を県に要請することを賛成多数で採決した。

 長年議論が続いてきた移転計画が大きく前進する一方、移転に反対して泊に残る意向を示す漁業者もあり、主要な競り市場が糸満と泊に分かれる可能性もある。

 早ければ月内にも県に要請する。県漁連は、県が計画する糸満での高度衛生管理型荷さばき施設を備えた新市場整備に賛同し、泊漁港は「泊いゆまち」を中心にした都市部に近い消費地市場としてすみ分けをする方針だ。

臨時総会で糸満移転に向けた要請案の投票を見守る県漁業協同組合連合会の上原亀一会長(左)と理事ら=日、那覇市の水産会館

 臨時総会で県漁連の上原会長は、泊漁港の老朽化や、土地が狭く新市場や加工施設などを整備できないことなどを理由に、泊で新市場を早期に整備することは難しいと改めて説明した。

 臨時総会では詳しい説明を求める声が上がり、議論が紛糾する場面もあったが、賛成27、反対9で採決した。移転に反対してきた県漁連理事で那覇地区漁協の山内得信組合長は「一方的に泊案の可能性はないと断定し、強引で残念だった」と話した。

 上原会長は「今回の決議が新たなスタートで、気を引き締めて移転に取り組む」と歓迎した。市場の分裂の可能性には「基本的にそうならないよう、理解して協力いただけるよう努力する」と語った。

 県水産課の島袋進副参事は「県漁連の方向性が決まって大きな前進になる。要請内容を踏まえ、業界全体の意向を聞きながら予算確保に取り組む」と述べた。

競り機能の糸満移転が計画されている泊漁港(資料写真)

 < 「議論尽くされず」 泊、施設老朽化を憂慮 >

 県漁業協同組合連合会(県漁連)が、泊魚市場の競り機能の糸満移転を賛成多数で決めた。26日の総会では「議論が尽くされていない」と反対の声があった一方、施設の老朽化だけが進む現状に「県の水産業の発展が阻害される」と危機感を示す意見が多数を占めた。那覇地区漁協など泊再開発推進委員会の7団体は泊に残る考えで、糸満移転に向けた水産庁の予算採択では不透明な部分も残る。

 那覇市沿岸漁協の﨑原孝夫組合長は「なぜ早急に臨時総会を開くのか」と、説明の場を持たずに総会を開いたことを批判した。

 﨑原組合長は「移転後の収支が見えていない中で、赤字になった時に理事の皆さんは責任をとれるのか」と厳しく追及した。

 一方、恩納村漁協の山城正巳組合長は「これまで何度も議論している。いつになったらできるのか。

 食の安全に対する意識が高まる中、高度衛生管理型施設が導入されていない沖縄の魚の評価は他県に比べて低いままだ」と計画が動かない現状にいらだちを見せる。

 泊魚市場で取引する沖縄鮮魚卸流通協同組合の国吉斉理事長は「那覇市は再整備に中長期計画を立てると言うが、10、15年は待てない」として糸満移転を強く要望した。

 泊再開発推進委員会の7団体は、引き続き泊で水揚げをする考えだ。7団体の中心になった那覇地区漁協の山内得信組合長は「7団体が(糸満に)行かない場合、糸満だけで国の水揚げ目標に届くのか。これで合意形成ができたとみなすのか、水産庁の判断を見極めたい」とし、糸満移転に向けた予算の確保に懐疑的だ。

 泊魚市場一帯の再整備計画を支援する那覇市商工農水課は「まずは地元の漁業者と話し合い、市として何ができるか検討していきたい」と話した。【琉球新報電子版】