米空軍嘉手納基地周辺の河川を水源とする北谷浄水場から、発がん性などのリスクが指摘される有機フッ素化合物(PFOS)が高濃度で検出された問題に絡み、沖縄防衛局が2017年度に実施した調査事業で、当初計画では調査項目に河川の「底質」や「地下水」が含まれていたが、後に削除していたことが分かった。河川の底質や地下水は汚染物質の蓄積を調べるのに重要な材料となるが、調査は「河川水」のみを採取する内容となった。専門家は「その内容では調査の意味がない。無責任だ」と指摘している。
防衛局は当初、嘉手納基地内で水質調査を行う予定だったが、米軍の同意が得られず基地外での調査となった経緯が既に判明している。
底質や地下水が調査項目から削除されたのは、環境調査団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)」の河村雅美代表が、防衛局への情報公開請求で得た資料に記載されている。
資料名は「設計等技術業務委託変更契約書(第2回)」。変更契約で底質や地下水の調査を削除した後も、他の項目の予算が増え、契約金額(1550万円)に変更はない。
琉球新報が防衛局への情報公開請求で7月31日に得た同事業の調査報告書には、河川水の測定結果が記載されているが、底質や地下水の記載はない。
報告書は汚染源を特定していないが、「水質保全対策の基本は発生源対策」だとの認識を示している。
しかし「対象地(大工廻(だくじゃく)川)の多くが米軍提供施設という特殊性を踏まえると、発生源対策を行うことは時間を要する」と説明した。その上で「本検討では、速やかに行うことができる措置として、河川水の処理による対策を基本として検討を行うこととした」とし、浄水処理施設でのPFOS処理などの方法を記載している。
河村氏は「米軍施設という特殊性を考えると時間がかかるというのは、基地内調査は『お手上げ』という宣言で、無責任だ。特殊な施設だからこそ防衛局が調査したはずだ」と指摘した。その上で「浄水施設での処理はあくまで暫定対策だ。米国の健康勧告値を超える値でPFOSが検出されており、沖縄が求めてきた汚染源を特定しない調査は意味がない」と批判した。